エクセルは多くの会社にすでに入っており、追加コストなしで請求書を作れる手軽な手段です。一方で、インボイス制度で記載事項が増え、電子帳簿保存法で保存方法のルールも変わったため、「とりあえず作る」だけでは後で困ることがあります。
この記事では、エクセル請求書の作り方を初心者でも迷わない手順に分解し、記載項目の決め方・レイアウト・自動計算(関数)・PDF化・保存の注意点までを通しで解説します。さらに、件数が増えたときの効率化の選択肢も比較表で整理します。
この記事で分かること
- インボイス制度に対応したエクセル請求書を、4ステップで順番に作る流れが把握できる
- 印刷用紙の設定からレイアウト、関数による自動計算までの具体的な手順が分かる
- 軽減税率(8%・10%)が混在するときの消費税額の計算方法が分かる
- PDF変換・電子帳簿保存法への対応・ファイル管理のルールの決め方が分かる
- エクセル運用の限界(属人化・請求業務の電子化)と、効率化の判断ポイントが分かる
- 請求書作成後の経理(受領した領収書の仕訳入力)を軽くする方法も分かる
結論を先に言うと、「記載項目 → レイアウト → 自動計算 → PDF保存」の4ステップを押さえれば、インボイス対応の請求書はエクセルで十分作れます。規模が大きくなったら手段の見直しを検討しましょう。
エクセル請求書の作り方の全体像と必要な準備
最初に、作業の全体像と前提を押さえます。手順を体に入れておくと、途中で迷わずに済みます。エクセルはあくまで表計算ソフトなので、Wordのように「請求書らしい体裁」が最初から用意されているわけではありません。だからこそ、記載項目とレイアウトを先に決めてから手を動かすと、作り直しが減ります。
作成は4ステップで進む
エクセルでの請求書作成は、大きく次の4ステップに分かれます。
- 記載項目を決める(インボイス制度の必須項目を含める)
- レイアウトを作る(用紙サイズ・タイトル・宛先・明細欄)
- 金額を自動計算する(SUM・ROUNDDOWNなどの関数)
- PDFに変換して保存・送付する(電帳法対応を意識)
このうち1度きちんと作れば、次回からはコピーして数字を入れ替えるだけで使い回せます。テンプレート化を前提に最初だけ丁寧に作るのがコツです。
用意するものと作業前のチェック
着手前に、以下を手元に揃えておくとスムーズです。
- 自社情報(会社名・住所・連絡先・適格請求書発行事業者の登録番号)
- 取引先の正式名称・宛名(部署名・担当者名)
- 請求対象の品目・数量・単価・適用税率
- 押印を使う場合は電子印鑑の画像
特に登録番号は、インボイス(適格請求書)として認められるための必須要素です。登録の有無や番号は、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認できます。
ステップ1:請求書に記載する項目を決める(インボイス対応)
レイアウトを作る前に、何を載せるかを確定します。ここを飛ばすと作り直しになりやすいので、最初に固めます。
一般的な請求書の基本項目
業種を問わず、請求書には次の情報を入れるのが一般的です。
- 表題(「請求書」)
- 発行日・請求書番号
- 宛先(取引先名)
- 発行者情報(自社名・住所・連絡先・押印)
- 請求金額(合計)
- 取引内容の明細(品目・数量・単価・金額)
- 小計・消費税・合計
- 振込先口座・支払期限・備考
インボイス制度で追加される必須項目
2023年10月開始のインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、適格請求書として6項目の記載が求められます。
| 記載事項 | 内容の例 |
|---|---|
| 発行者の氏名・名称と登録番号 | 株式会社〇〇(T+13桁の登録番号) |
| 取引年月日 | 2026年6月30日 |
| 取引内容(軽減税率対象は明記) | 商品A ※は軽減税率対象 |
| 税率ごとに区分した合計額と適用税率 | 10%対象 100,000円 / 8%対象 50,000円 |
| 税率ごとの消費税額 | 10%分 10,000円 / 8%分 4,000円 |
| 交付を受ける事業者の氏名・名称 | △△商事 御中 |
ポイントは、税率(10%・8%)ごとに「対象金額」と「消費税額」を分けて表示することです。軽減税率の対象品目がある場合は、明細に「※」などの記号で目印を付け、欄外に注記します。
制度や保存方法の詳細は変わることがあるため、最新情報は国税庁の公表内容や電帳法・インボイス関連の記事もあわせて確認してください。
ステップ2:エクセル請求書フォーマットを作る(印刷用紙の設定)
項目が決まったら、いよいよレイアウトを作ります。差が出るのはこのフォーマット作成の工程で、見やすさと印刷時の崩れにくさを意識すると、後の修正が一気に減ります。
印刷用紙のサイズとページ設定
まず印刷を前提に、印刷用紙のサイズとページ設定を整えます。
- 「ページレイアウト」タブを開く
- 印刷用紙のサイズをA4(210×297mm)、印刷の向きを縦に設定する
- 余白を「狭い」または任意に調整し、1ページに収まるか確認する
- 列幅・行高をあらかじめ整えておく
エクセルは画面の見た目と印刷結果がずれやすいソフトなので、早い段階で「印刷プレビュー」で確認する習慣をつけると手戻りが減ります。A4・1ページに収まらないと、相手側で2ページに分かれて印刷され、明細の途中で改ページされてしまうことがあるため、印刷用紙の設定はフォーマット作成の最初に固めておくのがおすすめです。
タイトル・宛先・発行者・明細欄を配置
上から下へ、視線の流れに沿って配置します。
- 上部:表題「請求書」、右上に請求日・請求番号
- 左上:宛先(取引先名+御中)
- 右側:発行者情報(自社名・住所・登録番号・押印欄)
- 中央:請求金額(合計)を大きく
- 下部:明細表(品目・数量・単価・金額)
- 最下部:小計・消費税・合計、振込先・支払期限・備考
見やすいレイアウトを作るコツ
読み手が迷わない請求書には共通点があります。
- 罫線は太線で外枠、細線で内側とメリハリをつける
- 金額列は**右揃え+桁区切り(カンマ)**で統一する
- セルの結合は最小限にし、後の再利用や計算で困らないようにする
- フォントは1〜2種類に絞り、サイズは合計金額だけ大きくする
エクセルでの帳票づくりに慣れたい場合は、エクセル帳簿の作り方やエクセルで複式簿記をつける方法も、表設計の考え方の参考になります。
ステップ3:エクセル請求書の作り方の要|関数で金額を自動計算する
請求書づくりで最もミスが出やすいのが金額計算です。手入力をやめて関数に任せることで、精度とスピードが両立します。
明細・小計・消費税を計算する基本関数
最低限、次の関数を覚えておけば実務はこなせます。
| 計算したいもの | 関数・数式の例 | 役割 |
|---|---|---|
| 明細の金額 | =数量セル*単価セル | 行ごとの金額 |
| 小計 | =SUM(金額範囲) | 明細合計 |
| 消費税(端数処理) | =ROUNDDOWN(小計*0.1,0) | 切り捨てで税額算出 |
| 税率別の対象額 | =SUMIF(税率列,"10%",金額列) | 税率ごとに集計 |
| 請求合計 | =小計+消費税 | 最終請求額 |
端数処理は、切り捨て(ROUNDDOWN)・切り上げ(ROUNDUP)・四捨五入(ROUND)から自社ルールを1つに統一します。インボイス制度では「1つの適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理」が原則です。
軽減税率(8%・10%)が混在する場合
飲食料品など軽減税率の対象がある場合は、税率ごとに分けて集計します。
- 明細に「税率」列を追加し、各行に10%/8%を入力
SUMIFで税率ごとの対象金額を集計- 税率ごとに消費税額を計算して表示
- 軽減税率対象の品目には「※」を付け、欄外に注記
自動計算で防げるミス
関数化しておくと、次のような典型ミスを防げます。
- 数量や単価を直しても合計が更新されない手入力ミス
- 消費税の端数処理が行ごとにバラバラになる不一致
- セルのコピーで金額だけ古い値が残る転記ミス
数式を入れたセルは、誤って数値で上書きしないようセルの保護をかけておくと安心です。
ステップ4:エクセル請求書の作り方の仕上げ|PDF変換・保存・送付の注意点
完成した請求書は、送り方と残し方にもルールがあります。ここを軽視すると、後の保存対応でつまずきます。
メール送付はPDFに変換する
エクセルファイル(xlsx)のまま送るのは避け、PDFに変換します。
- 「ファイル」→「名前を付けて保存」または「エクスポート」でPDF形式を選択
- xlsxのまま送ると、相手環境で書式が崩れる/数式が見える/誤編集されるリスクがある
- 原本のxlsxは社内に残し、送付用はPDFと役割を分ける
電子帳簿保存法(電帳法)への対応
メールやクラウドで請求書を電子データのまま受け渡しした場合、それは電子取引データにあたり、電子帳簿保存法のルールに沿った保存が必要です。
- 電子で受け取った/送った請求書は、原則電子データのまま保存する
- 「日付・取引先・金額」で検索できる状態を整える(ファイル名規則やインデックスで対応)
- 改ざん防止のため、タイムスタンプや訂正・削除の記録が残る運用などの措置を取る
要件の詳細や猶予措置は変わることがあるため、最新の内容は国税庁の案内と電帳法・インボイスのカテゴリ記事で確認してください。
ファイル管理のルールを決める
エクセル運用で後から困らないために、保存ルールを先に決めます。
- ファイル名は「請求日_取引先_請求番号」など統一規則にする
- 請求番号は重複しない連番で採番する
- フォルダは「年度/取引先」など検索しやすい階層にする
エクセル請求書の作り方を覚えた後の管理課題と効率化
エクセルは手軽ですが、件数が増えると運用面の負担が見えてきます。作り方を覚えても、その後の保存・検索・入金管理までエクセルだけで回そうとすると、属人化や請求業務の電子化の遅れといった課題が出てきます。自社の規模に合う手段を選びましょう。
エクセル運用で起きやすい課題
請求書をエクセルで管理し続けると、次のような問題が起きがちです。
- ファイルの誤上書き・削除やバージョンの混在
- 取引先・請求番号が増えると検索や突合が煩雑になる
- 計算式の崩れや属人化(作った人しか分からない)
- 入金消込や未払い管理が別管理になりやすい
請求書作成の3つの手段を比較
「何で作るか」は、月あたりの発行枚数と求める機能で選びます。
| 手段 | コスト | 向いている規模 | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|---|
| エクセル自作 | 実質無料 | 月数件まで | 自由度が高い・追加導入不要 | 管理・保存が属人化しやすい |
| エクセルテンプレート | 無料〜 | 月数件〜十数件 | 項目・関数が設定済みで早い | 件数増には限界 |
| クラウド請求書サービス | 月額制 | 毎月多数を発行 | 採番・電子保存・入金管理を一元化 | 月額費用・移行の手間 |
まずは無料テンプレートで運用を始め、毎月の発行が十数件を超えてきたらクラウド化を検討する、という段階的な進め方が現実的です。Microsoftや会計ソフト各社が無料のエクセル請求書テンプレートを配布しています。
効率化の判断ポイント
手段を切り替える目安は、次のような状態が増えてきたときです。
- 月の請求書発行が継続的に十数件以上ある
- インボイス・電帳法の保存対応に手間を感じている
- 請求から入金確認・督促までを一元管理したい
初心者がつまずきやすいポイントと対処
ここまでの手順どおりにエクセルで請求書を作っても、初心者がつまずきやすい箇所はだいたい決まっています。完成前に次の点を見直しておくと、取引先への送付後に修正版を送り直す手間を避けられます。
消費税額の端数処理が請求書ごとにバラつく
最も多いのが、消費税額の端数処理が請求書ごと・行ごとにバラついてしまうケースです。インボイス制度では「1つの適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理」が原則なので、明細1行ずつで端数処理(ROUNDDOWN等)をかけると、合計が国の想定する計算と1円ずれることがあります。対処としては、税率ごとに対象額をSUMIFで集計してから、その合計に対して1回だけ端数処理を行う数式に統一します。8%対象と10%対象を別々に集計し、それぞれ税率ごとの消費税額を表示すれば、インボイスの区分記載要件も同時に満たせます。
登録番号や宛先の入力漏れ・コピペミス
適格請求書発行事業者の登録番号(T+13桁)の記載漏れや、前回の請求書を使い回したときに宛先・請求番号が古いまま残るミスも頻発します。登録番号は固定値なのでテンプレート側に最初から入れておき、宛先・請求番号・請求日だけを毎回更新する運用にすると安全です。請求番号は重複しない連番にし、ファイル名にも含めておくと、後から特定の請求書を探すときに困りません。
結合セルと手入力で数式が壊れる
見た目を整えようとセルの結合を多用すると、行の追加・コピーで数式の参照範囲が崩れることがあります。結合は最小限にし、金額セルは必ず関数で出して手入力で上書きしないのが、エクセル請求書を長く使い回すコツです。数式を入れたセルには「セルの保護」をかけ、誤って数値で上書きしない状態にしておくと、再利用時のトラブルを防げます。
請求書を作った後の経理・仕訳を効率化する(AI仕訳)
ここからは、請求書「作成後」の経理処理を軽くする話です。請求書づくりと同じくらい、受領した領収書やレシートの仕訳入力も負担になりがちです。
受領側の入力負担という見落としがちな課題
請求書を発行する一方で、会社に��経費の領収書・レシート・カード明細・通帳が日々たまります。これらを1件ずつ会計ソフトに手入力するのは時間がかかり、転記ミスも起きやすい作業です。
AI仕訳でできること
AI仕訳(運営:株式会社Saucer)は、領収書・レシート・クレジットカード明細・銀行通帳などをスキャン(AI-OCR)し、AIが仕訳データを自動生成するサービスです。
- 入力:領収書/レシート/カード明細/通帳(振替伝票・入出金伝票の独自定義データ化にも対応)
- 連携:マネーフォワード クラウド会計/freee会計/弥生会計にCSVアップロードで取込可(その他CSVインポート対応ソフトも順次拡大)
- スキャナ:ScanSnapシリーズ対応(A4対応)
- サポート:公式LINEで対応
エクセルで請求書を発行しつつ、受領側の仕訳入力をAIに肩代わりさせることで、経理全体の手入力を減らせます。記帳代行を行う税理士事務所から、自社経理を効率化したい一般企業まで利用できます。
入力作業の削減を検討している方は、まず無料トライアルで自社の領収書を試してみるのが分かりやすいです。料金・最新のプランはAI仕訳の公式サイトで確認できます。
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なお、システム利用料の会計処理が気になる場合はシステム利用料の勘定科目もあわせて参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
最後に、エクセル請求書づくりで多い疑問をまとめます。
エクセルで請求書は書けますか?
書けます。罫線とセルでレイアウトを作り、SUMやROUNDDOWNなどの関数で金額・消費税を自動計算できます。インボイスの記載事項(登録番号・税率ごとの区分など)も手入力で満たせるため、月数件程度なら十分実用的です。件数が増えると番号管理や保存・検索が煩雑になるため、規模に応じてテンプレートやクラウドサービスの併用を検討します。
Excelの暗黙のルールとは?
請求書づくりで意識したい慣習として、(1)数値は半角で統一、(2)計算結果は関数で出し手入力で上書きしない、(3)1セル1情報で結合セルを多用しすぎない、(4)原本はxlsxで残し送付用はPDFにする、といった点があります。これらを守ると計算ミスや書式崩れ、再利用時のトラブルを防げます。
エクセルで一覧表から個別のシートを作成するには?
取引先一覧から請求書を量産したい場合は、(1)VLOOKUP/XLOOKUPで一覧表から宛先・金額を参照する、(2)Wordと連携した差し込み印刷を使う、(3)マクロ(VBA)で取引先ごとにシートやPDFを自動生成する、のいずれかが定番です。件数が少なければ関数参照、定型で大量に出すならマクロが向きます。
請求書は何で作るの?
主な選択肢はエクセル(自作・テンプレート)、Word、クラウド請求書サービス、会計ソフト付属の請求機能です。月数件ならエクセル、毎月多数を発行し電子保存や入金管理まで一元化したいならクラウドサービスが効率的です。
エクセルの請求書で消費税を自動計算するには?
明細ごとに「数量×単価」をSUMで小計し、消費税は端数処理を統一するためROUNDDOWN(切り捨て)などで計算します。軽減税率(8%)と標準税率(10%)が混在する場合はSUMIFで税率ごとに対象額を集計し、税率別に消費税額を表示します。インボイス制度では税率ごとの区分記載が必要です。
エクセルで作った請求書はそのままメールで送っていい?
原則としてPDFに変換してから送ります。xlsxのままだと書式崩れ・数式の露出・誤編集のリスクがあるためです。また、電子データで受け渡しした請求書は電子帳簿保存法の電子取引データ保存の対象になるため、検索可能な状態での保存も意識します。
まとめ:エクセル請求書の作り方は、「記載項目を決める → レイアウトを作る → 関数で自動計算 → PDF保存」の4ステップが基本です。インボイス制度では税率ごとの区分と登録番号、電帳法では電子データの適切な保存がポイントになります。月数件ならエクセルで十分ですが、発行枚数が増えてきたらテンプレートやクラウドサービス、そして受領側の仕訳自動化もあわせて検討すると、経理全体の負担を着実に減らせます。
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