エクセル請求書の作り方|初心者でも今日作れる完全ガイド
「請求書を作るように言われたけれど、専用ソフトもないしどうすればいいかわからない」——そんな現場の担当者にとって、最も身近なツールがエクセル(Excel)です。エクセルなら追加コストなしで、自分のペースで請求書を作り始められます。
この記事では、エクセル請求書の作り方を初心者向けにステップごとに解説します。インボイス制度に対応した記載項目、関数を使った金額の自動計算、無料テンプレートの活用、PDFへの変換や送付・保存時の注意点まで、実務でそのまま使える内容を網羅しました。
この記事でわかること
- 請求書に必須の記載項目(インボイス制度対応)
- エクセルでゼロから請求書を作る具体的な手順
- SUM・ROUNDDOWN・VLOOKUP関数による自動計算
- 無料テンプレートと作成ソフトの比較
- 送付・保存(電帳法)で初心者がやりがちなミスと対策
まず全体像を、下の早見表で確認しておきましょう。
| 作り方 | 向いている人 | 費用 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| エクセルでゼロから作成 | 様式を自由に決めたい人 | 無料(Excel保有時) | ★★★ |
| 無料テンプレートを使う | とにかく早く作りたい初心者 | 無料 | ★ |
| 請求書作成ソフト/クラウド | 毎月多数を発行する人 | 無料〜有料 | ★ |
エクセル請求書を作るメリットと向き不向き
最初に、なぜエクセルが請求書作成の入口として選ばれるのか、そして「どこまでエクセルで対応すべきか」を整理します。向き不向きを理解しておくと、後で「ソフトに乗り換えるべきか」を判断しやすくなります。
エクセル請求書のメリット
エクセルが初心者に選ばれる理由は、何より導入のハードルが低いことにあります。
- 多くのPCに最初から入っており、追加コストがかからない
- レイアウトや項目を自由にカスタマイズできる
- SUM関数などで金額計算を自動化できる
- 操作に慣れている人が多く、社内で引き継ぎやすい
エクセル請求書が向いているケース・向かないケース
一方で、エクセルは「請求書専用ツール」ではないため、使い方を間違えると管理が破綻します。下の表で自分の状況を確認してください。
| 観点 | 向いているケース | 向かないケース |
|---|---|---|
| 発行枚数 | 月数枚〜十数枚程度 | 毎月数十枚以上 |
| 取引先数 | 少なく変動が小さい | 多く頻繁に増減する |
| 体制 | 担当者が1〜2名 | 複数人で同時編集したい |
| 保存・検索 | 件数が少なく探しやすい | 過去分を頻繁に検索する |
ポイント:エクセルは「少量・自由度重視」に強く、「大量・管理重視」に弱いツールです。発行枚数が増えてきたら、後述の作成ソフトへの移行を検討しましょう。
エクセルで作る前に決めておくこと
作業を始める前に、次の3点を決めておくと手戻りがありません。
- インボイス制度に対応するか(登録番号を記載するか)
- 用紙サイズ(A4縦が一般的)
- 送付方法(郵送かメール/PDFか)
特にインボイス制度への対応有無は、後述する記載項目に直結するため、最初に確認しておきましょう。
請求書に記載する項目を決める(インボイス制度対応)
エクセルで請求書を作る第一歩は、「何を書くか」を確定させることです。記載項目が漏れると取引先に再発行を求められたり、消費税の控除に支障が出たりします。
一般的な請求書の必須項目
取引で最低限必要となる基本項目は次のとおりです。
- 書類のタイトル(「請求書」)
- 取引先名(宛先)
- 自社名・住所・連絡先(発行者情報)
- 請求書番号
- 発行日(請求日)
- 取引内容(品目・数量・単価)
- 請求金額(税抜・消費税・税込合計)
- 振込先口座・支払期限
- 備考(振込手数料の負担など)
適格請求書(インボイス)で追加��れる項目
2023年10月に開始したインボイス制度に対応する場合、上記に加えて以下が必要です。買い手が仕入税額控除を受けるための要件なので、課税事業者は押さえておきましょう。
| 追加項目 | 内容 |
|---|---|
| 登録番号 | 「T+13桁」の適格請求書発行事業者の登録番号 |
| 適用税率 | 10%・8%(軽減税率)の区分 |
| 税率ごとの対価の額 | 税率別に区分した合計金額 |
| 税率ごとの消費税額 | 税率別に計算した消費税額 |
制度の正確な要件は変更されることがあるため、最新情報は**国税庁「インボイス制度特設サイト」**で確認してください。
軽減税率(8%)の扱いに注意
飲食料品などを扱う場合、10%と8%が混在します。この場合、税率ごとに小計と消費税を分けて記載する必要があります。エクセルでは税率列を設け、後述の関数で税率別に集計すると正確です。
軽減税率の対象がない取引なら、10%のみで作れば問題ありません。自社の取引内容に合わせて項目を絞り込みましょう。
エクセル請求書のフォーマットを作る手順【図解の流れ】
ここからは、エクセルでゼロから請求書フォーマットを作る具体的な手順です。初心者でも順番どおりに進めれば、実用的な様式が完成します。
STEP1:用紙サイズとページレイアウトを設定する
最初に印刷時の体裁を決めます。ここを後回しにすると、完成後にレイアウトが崩れがちです。
- 「ページレイアウト」タブ →「サイズ」で印刷用紙のサイズを A4 に設定する
- 「印刷の向き」を縦に設定
- 「余白」を「狭い」または任意に調整
- 列幅をあらかじめ整え、A4の幅に収まるよう意識する
STEP2:タイトルと基本情報を配置する
次に、書類の骨格を作ります。上から自然に読める順に配置するのがコツです。
- 上部中央に大きめのフォントで「請求書」
- 右上に 発行日・請求書番号
- 左側に 宛先(取引先名+御中)
- 宛先の下または右側に 自社情報(社名・住所・登録番号・連絡先)
取引先名には「御中」、担当者個人宛なら「様」を付けます。両方を重ねて使わないよう注意しましょう。
STEP3:請求金額エリアと明細表を作る
請求書の中心となる部分です。視認性を高めるため、合計金額は目立つ位置に置きます。
- 宛先の下に「ご請求金額:¥〇〇〇」を大きく配置
- その下に明細表を作成(品目/数量/単価/金額の列)
- 表の下に 小計・消費税・合計 の行を設ける
- 表全体に罫線を引き、見出し行に色を付けて区別する
STEP4:振込先・備考・支払期限を追加する
最後に、入金に必要な情報を漏れなく入れます。
- 銀行名・支店名・預金種別・口座番号・口座名義
- 支払期限(例:請求書発行月の翌月末日)
- 備考欄(振込手数料の負担、軽減税率対象の注記など)
ここまでで、フォーマットの土台が完成します。次の章で、金額計算を関数によって自動化していきましょう。
エクセル請求書で関数を使い金額を自動計算する(SUM・ROUNDDOWN・VLOOKUP)
エクセル請求書の最大の利点は、関数による自動計算です。手計算をなくすことで、初心者でも計算ミスを大幅に減らせます。代表的な3つの関数を押さえましょう。
SUM関数で小計・合計を出す
明細の金額を合算する基本の関数です。
- 各行の金額:
=数量セル*単価セル(例=C5*D5) - 小計:
=SUM(E5:E14)(金額列の範囲を合計) - 税込合計:
=小計セル+消費税セル
範囲を指定するだけで、明細を増減しても自動で再計算されます。
ROUNDDOWN関数で消費税の端数を処理する
消費税の計算では1円未満の端数が出ます。端数処理を統一しないと取引先と金額が合わなくなるため、関数で固定しましょう。
| 処理方法 | 関数 | 例(税抜10,000円・10%) |
|---|---|---|
| 切り捨て | =ROUNDDOWN(小計*0.1,0) | 1,000円 |
| 四捨五入 | =ROUND(小計*0.1,0) | 1,000円 |
| 切り上げ | =ROUNDUP(小計*0.1,0) | 1,000円 |
端数処理のルールは取引先との取り決めによります。一般的には切り捨てが多く使われますが、社内で統一しておくことが重要です。
VLOOKUPとプルダウンで入力を効率化する
取引先名や品目を毎回手入力するとミスのもとです。別シートにマスタを作り、VLOOKUP関数や入力規則(プルダウン)で呼び出すと、半自動で入力できます。
- 別シートに「品目一覧」「単価」のマスタを作る
- 明細の品目セルに「データの入力規則」でプルダウンを設定
- 単価セルに
=VLOOKUP(品目セル,マスタ範囲,2,FALSE)を入力
これで品目を選ぶだけで単価が自動表示され、入力スピードと正確性が両立します。エクセルでの帳簿管理を全体的に効率化したい場合は、エクセルでの帳簿の作り方もあわせて参考にしてください。
無料テンプレートを使えば初心者でも最短で作れる
「関数を組むのは難しそう」という初心者には、無料の請求書テンプレートの活用が最短ルートです。必要な項目と数式があらかじめ設定されているため、文字を置き換えるだけで完成します。
テンプレートを使う手順
Microsoft Excelのテンプレートを例にすると、流れはとてもシンプルです。
- Excel(またはWeb版)で請求書テンプレートを検索する
- 使いたいテンプレートを開く
- セルの値(社名・金額など)を自社の情報に置き換える
- 保存・印刷、またはPDFとして共有する
組み込みの数式が合計を自動計算してくれるため、時間を節約しながら精度を保てます。ロゴを差し込めばブランドの一貫性も出せます。
主な無料テンプレート・サービスの比較
代表的な無料テンプレート提供元を、初心者目線で比較しました。自社の優遇なく公開情報ベースで並べています。
| 提供元 | 形式 | インボイス対応 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Microsoft Excel | Excel/Web | テンプレによる | Excel標準。数式入りで即利用可 |
| Misoca(弥生) | クラウド/テンプレ | 対応 | 月10枚まで無料で作成可 |
| makeLeaps | テンプレ/クラウド | 対応 | 様式が豊富 |
| freee/マネーフォワード | クラウド | 対応 | 会計ソフトと連携しやすい |
※各サービスの無料枠・対応範囲は変更される場合があります。利用前に公式サイトで最新条件を確認してください。
テンプレート利用時の注意点
便利な反面、テンプレートには次の落とし穴があります。
- 自社の取引(軽減税率など)に合わない項目構成のことがある
- 数式が組まれている部分を誤って消すとエラーになる
- 配布元によってはインボイス制度に未対応の古い様式もある
ダウンロードしたら、まず登録番号欄・税率欄が自社の要件を満たしているか確認しましょう。
作成したエクセル請求書を送付・保存する際の注意点
請求書は「作って終わり」ではありません。送付方法と保存方法を誤ると、トラブルや法令違反につながるため、初心者が特に注意すべき点をまとめ���す。
メールで送るときは必ずPDFに変換する
エクセルファイル(.xlsx)のまま送るのは避けましょう。理由は明確です。
- 受信側の環境でレイアウトや数式が崩れることがある
- 金額を書き換えられる(改ざんされる)リスクがある
- 相手にExcelがないと開けない場合がある
エクセルでは「名前を付けて保存」→ファイル形式で「PDF」を選ぶか、「エクスポート」からPDF化できます。送付前にPDFを開いて、印刷範囲やレイアウトのズレがないか確認しましょう。
ファイルの管理ミスを防ぐ運用ルール
エクセル運用で最も多いのが、上書き・削除・取り違えのミスです。次のルールで予防します。
- ファイル名に「取引先名+請求年月+番号」を入れる
- 原本テンプレは別フォルダに保管し、毎回コピーして使う
- 月ごと・取引先ごとにフォルダを分ける
- 発行済み請求書は直接編集せず、訂正は赤伝・新番号で対応
電子帳簿保存法(電帳法)への対応
メールやクラウドで授受した請求書は、電子取引データとして電子保存が義務化されています。エクセルやPDFで保存するだけでは、検索要件などの保存要件を満たしにくい点に注意が必要です。
| 要件 | 内容の例 |
|---|---|
| 真実性の確保 | タイムスタンプ付与、訂正・削除履歴の管理など |
| 可視性の確保 | 日付・金額・取引先での検索ができる状態 |
件数が少ないうちは規則的なファイル名と一覧表で対応できますが、件数が増えると手作業での要件充足は負担が大きくなります。正確な要件は**国税庁「電子帳簿保存法」**のページで確認してください。
請求書まわりで発生するシステム費用の経理処理については、システム利用料の勘定科目も参考になります。
エクセル請求書の課題と、効率化の選択肢
エクセルは手軽な反面、運用を続けると属人化・管理の煩雑化・入力負担といった課題が表面化します。最後に、課題の整理と効率化の選択肢を中立的に紹介します。
エクセル請求書でよくある課題
- 取引が増えると作成・検索・管理に手間がかかる
- 関数やレイアウトが特定の人しか触れない(属人化)
- 手入力による金額・宛先のミスが起きやすい
- 電帳法・インボイス制度への対応に手間がかかる
効率化の方法を比較する
課題に応じて、次のような効率化策があります。発行量と予算で選びましょう。
| 方法 | 主なメリット | 主なデメリット | 向いている規模 |
|---|---|---|---|
| 無料テンプレート | コスト0・即利用 | 管理・検索は手作業 | 月数枚 |
| 請求書作成ソフト/クラウド | 発行〜管理を一元化、電帳法対応 | 月額費用がかかる | 月十枚以上 |
| 受領請求書のデータ化サービス | 受け取った請求書・領収書の入力を自動化 | サービス選定が必要 | 経理負担が重い事業者 |
「作成」だけでなく「受領・記帳」の負担も見直す
請求業務の負担は、自社が請求書を作る側だけにあるわけではありません。取引先から受け取った請求書・領収書を会計ソフトへ入力する作業も、経理の大きな負担になりがちです。
発行は請求書ソフトで、受領した書類のデータ化・仕訳はOCRサービスで——と役割を分けると、経理全体の入力作業を圧縮できます。
経理処理の基礎を固めたい場合は、エクセルで複式簿記を行う方法や請求書カテゴリの記事一覧もあわせてご覧ください。
受け取った領収書・請求書の入力を自動化する「AI仕訳」
ここまでエクセルでの請求書「作成」を中心に解説しましたが、経理の負担は受け取った書類の入力・仕訳にも大きく存在します。この部分を効率化したい方向けに、参考として自社サービスを紹介します。
AI仕訳(運営:株式会社Saucer)は、領収書・レシート・クレジットカード明細・銀行通帳などをスキャン(AI-OCR)し、AIが仕訳データを自動生成するサービスです。生成したデータは会計ソフトにCSVで取り込めます。
- 対応する会計ソフト:マネーフォワード クラウド会計/freee会計/弥生会計(その他CSVインポート対応ソフトも順次拡大)
- 入力対象:領収書・レシート・カード明細・通帳など
- 特徴:業界最安値水準(10円/枚)でのデータ化を訴求、即日データ化
- サポート:公式LINEで対応
エクセルで請求書を作りつつ、受領書類の記帳をAIに任せることで、経理全体の入力作業を軽くできます。
無料で試せます:まずは手元の領収書で精度を確かめてみたい方は、AI仕訳の無料トライアルからお試しください。最新の料金・プランは公式サイトでご確認ください。
よくある質問(FAQ)
エクセルで請求書を作成するにはどうしたらいいですか?
記載項目を決める→用紙サイズ・レイアウトを設定→宛先や請求番号などの基本情報を入力→明細表を作る→SUM関数やROUNDDOWN関数で金額を自動計算→体裁を整える、という手順で作成します。ゼロから作るのが不安な場合は、無料の請求書テンプレートを使えば項目があらかじめ用意されているため初心者でもすぐ始められます。
エクセルで請求書を自動作成するにはどうしたらいいですか?
小計・消費税・合計の計算はSUM・ROUNDDOWN関数で自動化できます。さらに取引先名や品目を一覧から選んで反映させたい場合はVLOOKUP関数やプルダウン(入力規則)を組み合わせます。毎月大量に発行する場合は、エクセル単体では限界があるため、請求書作成ソフトやクラウドサービスの利用が現実的です。
無料のエクセルで請求書を作成できるソフトは?
Microsoft Excel(Web版含む)の無料請求書テンプレート、Misoca・makeLeaps・freee・マネーフォワードなどが提供する無料テンプレートやフリープランがあります。月の発行枚数が少ないうちは、これらの無料枠でも十分に対応できます。
Excelの暗黙のルールとは?
請求書作成で守るべき慣習として、金額のセルは「通貨」「桁区切り」表示にする、消費税の端数処理を統一する、原本を直接上書きせず月ごとにファイルやシートを分ける、送付時はPDFに変換する、などがあります。これらを守らないと計算ミスやデータ消失、改ざん疑義につながります。
エクセルで作った請求書はそのままメールで送ってよいですか?
エクセル形式(.xlsx)のまま送るのは避け、PDFに変換してから送付するのが基本です。エクセルのままだと受信側で数式やレイアウトが崩れたり、金額を書き換えられたりするリスクがあるためです。
エクセルで作った請求書は電子帳簿保存法に対応できますか?
メールやクラウドで授受した請求書は電子取引データとして電子保存が義務化されています。エクセルやPDFのまま保存するだけでは保存要件(真実性・可視性の確保)を満たしにくいため、検索要件などへの対応が必要です。詳しくは国税庁の電子帳簿保存法ページを確認し、対応が難しい場合は専用システムの利用を検討しましょう。
まとめ:まずはテンプレで作り、量が増えたら効率化を
エクセル請求書は、記載項目を決め、レイアウトを整え、関数で金額を自動計算するという流れを押さえれば、初心者でも今日から作成できます。最初は無料テンプレートを使えば、最短で実務に対応できます。
一方で、発行枚数が増えると作成・管理・保存の負担が大きくなり、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応も手間になります。そのときは請求書作成ソフトや、受領書類の入力を自動化するサービスへの移行を検討すると、経理全体の負担を軽減できます。
- 少量・自由度重視ならエクセル+テンプレート
- 大量・管理重視なら作成ソフト/クラウド
- 受領書類の記帳負担が重いならAI-OCRによる自動仕訳
自社の発行量と業務負担に合わせて、最適な方法を選んでいきましょう。請求業務まわりの基礎は請求書カテゴリで続けて確認できます。