エクセルで請求書の作り方|最短で実務に使えるフォーマットを作る
エクセル(Excel)は表計算と自動計算が得意なため、専用ソフトがなくてもインボイス制度に対応した請求書を作成できます。この記事では、エクセルで請求書の作り方を、記載項目の決め方からレイアウト作成、関数による自動計算、PDF変換・保存の注意点、無料テンプレートの活用法まで、初心者が迷わない順番で解説します。
この記事のゴール 「ゼロから自分で作る方法」と「テンプレートを使う方法」の両方を理解し、自分の取引に合った請求書をすぐに発行できる状態になること。
この記事で分かること
- 請求書に必須の記載項目とインボイス制度(適格請求書)で追加が必要な項目
- エクセルで請求書フォーマットを作る基本手順(印刷用紙のサイズ設定からレイアウトまで)
- SUM・VLOOKUPなど関数の設定による金額の自動計算のやり方
- マクロ・差し込み印刷で大量の請求書を一括作成する方法
- PDFへの変換・電子帳簿保存法(電帳法対応)など送付・保存の注意点
- 無料エクセルテンプレートの入手先と、納品書との連動・効率化の選択肢
まずは全体像を一覧で押さえましょう。
| 作成方法 | 向いている人 | 初期手間 | 自動計算 | コスト |
|---|---|---|---|---|
| ゼロから自作 | レイアウトを自由に決めたい人 | 大 | 自分で関数設定 | 無料 |
| 無料テンプレート活用 | すぐ発行したい初心者 | 小 | 設定済みが多い | 無料 |
| マクロ/差し込み印刷 | 大量発行する人 | 中〜大 | 一括作成可 | 無料 |
| 請求書作成サービス | 管理・電帳法も任せたい人 | 小 | 自動 | 無料〜有料 |
エクセルで請求書の作り方の前に:記載項目とインボイス対応を整理する
請求書はレイアウトより先に「何を書くか」を決めることが重要です。記載漏れがあると取引先に再発行を求められたり、仕入税額控除に影響したりするためです。
請求書に必須・推奨の記載項目
法律上、請求書のフォーマットは自由ですが、実務では以下を入れるのが一般的です。
- タイトル(「請求書」と明記)
- 宛先(取引先の会社名・担当者名)
- 発行者情報(自社名・住所・連絡先・押印欄)
- 請求番号・請求日・支払期限
- 取引内容(品名・数量・単価・金額)
- 小計・消費税額・合計金額
- 振込先口座(銀行名・支店・口座番号・名義)
- 備考(振込手数料の負担などの条件)
インボイス制度(適格請求書)で追加が必要な項目
2023年10月開始のインボイス制度に対応した適格請求書を発行する場合、上記に加えて次の3点が必須です(国税庁「適格請求書等保存方式の概要」参照)。
- 適格請求書発行事業者の登録番号(T+13桁)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率(10%対象・8%軽減税率対象を分けて記載)
- 税率ごとに区分した消費税額等
ポイント:軽減税率(8%)の取引がなくても、10%対象の合計と税額・税率を明示する必要があります。エクセルでは税率別に行・集計欄を分けておくと安心です。
項目を整理したら、自社の取引で使う/使わない欄を取捨選択し、次のレイアウト作成に進みます。なお帳簿づけ全般をエクセルで管理したい方は、エクセルで帳簿を作る方法もあわせて確認すると、請求から記帳までの流れがつかめます。
エクセルで請求書の作り方【基本手順】請求書フォーマットを作る
ここからは、テンプレートを使わずゼロから請求書フォーマットを作る手順を解説します。一度作れば毎回コピーして使い回せます。
ステップ1:用紙サイズとレイアウトの土台を作る
最初に印刷を意識して土台を整えます。まず印刷用紙のサイズを設定しましょう。請求書は一般的にA4(210×297mm)で作成するため、ここではA4に設定します。
- ページレイアウト → サイズ → A4 を選択(印刷用紙のサイズを先に決めておく)
- ページレイアウト → 余白 を「狭い」または任意に設定
- 列幅・行高を調整し、上部に発行者・宛先、中央に明細表、下部に振込先を配置するブロックを決める
- 表示 → 改ページプレビュー で1枚に収まるか確認
土台の段階で「どこに何を置くか」を決めておくと、後の修正が最小限で済みます。
ステップ2:ヘッダー(宛先・発行者・請求番号)を作る
- 左上に宛先(「〇〇株式会社 御中」)、右上に発行者情報と請求日・請求番号
- 請求番号は「2026-0001」のように年+連番にすると管理しやすい
- 請求金額(合計)を上部に大きく表示すると、取引先が一目で把握できる
ステップ3:明細表を作る
品名・数量・単価・金額を並べる表を作ります。罫線は ホーム → 罫線 から格子を引くと見やすくなります。金額列は次のステップで関数化するため、いったん空欄にしておきます。
見やすさのコツ:見出し行に薄い背景色、合計行は太字+上罫線を入れると視線が止まり、桁の読み間違いを防げます。複式での記帳まで意識するならエクセル複式簿記の作り方も参考になります。
エクセルで請求書の作り方の要:関数で金額を自動計算する(SUM・VLOOKUP)
エクセル最大の利点は自動計算です。手入力の電卓計算をなくすことで、計算ミスと再発行を防げます。
金額・小計・消費税・合計を自動化する数式
基本となる4つの数式を押さえれば、請求金額は自動で確定します。
| 計算項目 | 入力する数式(例) | 説明 |
|---|---|---|
| 各行の金額 | =C5*D5 | 数量×単価 |
| 小計 | =SUM(E5:E14) | 明細金額の合計 |
| 消費税(10%) | =ROUND(E15*0.1,0) | 小計×10%、端数は四捨五入 |
| 合計請求額 | =E15+E16 | 小計+消費税 |
ROUND関数で端数処理を統一すると、取引先との金額ズレを防げます(切り捨てはROUNDDOWN)。- 税率が混在する場合は、10%行と8%行で小計を分け、それぞれに税額を計算します。
商品マスタとVLOOKUPで「データ一覧から請求書」を作る
「データ一覧から請求書を作りたい」という場合は、別シートに商品マスタを用意します。
- 別シートに「品番・品名・単価」の一覧表を作る
- 請求書側で品番を入力したら、品名と単価を自動表示する
品名: =VLOOKUP(A5, 商品マスタ!$A:$C, 2, FALSE)
単価: =VLOOKUP(A5, 商品マスタ!$A:$C, 3, FALSE)
品番を入れるだけで品名・単価が呼び出され、金額まで自動計算されます。VLOOKUPが空欄でエラー表示になる場合は =IFERROR(VLOOKUP(...),"") で囲むと見た目がきれいになります。ここまでの関数の設定が、エクセル請求書の自動化の中核です。クラウドサービスの利用料など継続課金を請求する際の科目整理はシステム利用料の勘定科目も参考にしてください。
納品書と請求書を連動させて二度手間をなくす
納品書を先に発行し、その内容をそのまま請求書に転記している場合、エクセルなら納品書と請求書を連動させて二度入力をなくせます。連動の手順はシンプルです。
- 同じファイル内に「納品書」シートと「請求書」シートを用意する
- 請求書シートの該当セルに
=納品書!E7のように納品書シートを参照する関数を入れる - 納品書の品名・数量・金額を変更すると、請求書側にも自動で反映される
納品書と請求書の連動は、手作業での転記ミスを減らし、月末の請求業務を効率化します。納品書・請求書・領収書を一つのファイルで管理すれば、同じ取引データを使い回せるため、再入力の手間がほぼゼロになります。なお、適格請求書(インボイス)の保存期間は法人・個人事業主ともに原則7年間(税務上)であり、納品書も含めて控えを適切に保管する必要があります。
マクロ・差し込み印刷で大量の請求書を一括作成する
取引先が多く、毎月たくさんの請求書を発行する場合は、1枚ずつ作るのは非効率です。エクセルの一括作成機能を使いましょう。
マクロ(VBA)で連続発行する
顧客リストを元に請求書を連続でPDF出力するには、VBAマクロが有効です。
- 開発タブ → Visual Basic からマクロを記述
- 顧客リストを1行ずつ読み込み、請求書シートに転記してPDF保存するループを組む
- ファイル名を「請求番号+取引先名」で自動命名すると管理が楽
マクロは便利な一方、ファイルが重くなる・他人が編集しにくいという側面もあります。社内で共有するなら操作手順をコメントで残しておきましょう。
Power Queryや差し込み印刷を使う方法
- Power Query:取引データを集計・整形し、請求書の元データを自動更新できる
- Word差し込み印刷:エクセルの顧客リストをWord側の請求書テンプレートに差し込んで連続印刷する
少量なら関数、中〜大量ならマクロ/差し込み、という使い分けが現実的です。たとえば毎月10〜20件程度の同じレイアウトの請求書を発行するなら、顧客リストを1行ずつ読み込んでPDF保存するマクロを一度組んでしまえば、ボタン一つで全件を一括出力できます。一方で、月に数件しか発行しない場合はマクロのメンテナンスコストの方が高くつくため、関数とコピーで運用する方が無理がありません。自社の発行頻度と件数に合わせて、過剰に作り込みすぎないことが、エクセル運用を長続きさせるコツです。また、マクロを使う場合はファイルの拡張子をマクロ有効ブック(.xlsm)で保存する必要があり、取引先にそのまま送るとマクロが警告表示の原因になることもあるため、送付時はPDFに変換してから渡すのが安全です。
作成した請求書の送付・保存とエクセル管理の注意点
請求書は「作って終わり」ではありません。送付方法と保存に関するルールを守る必要があります。
メール送付はPDF変換が原則
エクセルファイルのまま送ると、相手が金額を編集できてしまい、レイアウトも環境で崩れます。送付前に必ずPDFへ変換しましょう。
- ファイル → エクスポート → PDF/XPSの作成
- または 名前を付けて保存 でファイル形式に「PDF」を選択
電子帳簿保存法への対応
電子データで授受した請求書は、改正電子帳簿保存法(電帳法)に基づく保存要件(真実性・可視性の確保)を満たして保存する必要があります。
- 改ざん防止のための事務処理規程を整備する、またはタイムスタンプ等で対応
- 「取引先名・日付・金額」で検索できるようファイル名を統一
- フォルダ構成と命名ルールを決め、属人化を防ぐ
電子帳簿保存法では、電子データで授受した請求書は紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存することが原則です。具体的には「日付・取引金額・取引先」の3項目で検索できる状態を確保する「検索要件」と、改ざんがないことを担保する「真実性の要件」の両方を満たす必要があります。エクセルで作成した請求書をPDFでメール送付した場合も電子取引に該当するため、送信した側・受領した側のどちらも電帳法対応が求められる点に注意しましょう。検索要件はファイル名のルール化で、真実性の要件は事務処理規程の整備かタイムスタンプの付与で対応するのが、専用システムを使わない場合の現実的な方法です。
エクセル管理に潜む課題
エクセルは手軽ですが、運用が大きくなると次の課題が出てきます。
| 課題 | 具体例 |
|---|---|
| 上書き・削除ミス | 過去の請求書を誤って書き換える |
| 検索性の低下 | 取引が増えると目的の請求書を探しにくい |
| 属人化 | 関数やマクロを作った人しか修正できない |
| 集計の手間 | 売上集計や入金消込を別途手作業で行う |
請求書発行後の記帳まで含めて効率化したい場合は、関連科目の整理(例:コピー代の勘定科目)も含め、ワークフロー全体を見直すのがおすすめです。請求書まわりの記事は請求書カテゴリにまとめています。
無料テンプレートを使えば初心者でもすぐ作れる
「ゼロから作るのは大変」という場合は、無料エクセルテンプレートの活用が最短ルートです。必要項目と関数があらかじめ設定されているため、自社情報と取引内容を入力するだけで完成します。無料エクセルテンプレートにはインボイス制度に対応した適格請求書フォーマットも多く、登録番号や税率区分の欄が用意済みなので、初心者でも記載漏れを防げます。
主な無料テンプレートの入手先
| 提供元 | 特徴 |
|---|---|
| Microsoft公式(Officeテンプレート) | ブラウザで検索→編集可能。合計を自動計算する数式入り、ロゴ差し替えも簡単 |
| 会計・請求サービス各社 | インボイス対応フォーマットが多く、登録番号欄が用意済み |
| テンプレート配布サイト | デザインのバリエーションが豊富 |
テンプレート利用の手順とカスタマイズ
- テンプレートをダウンロード(またはブラウザで開く)
- 自社名・住所・振込先・ロゴを差し替える
- 税率区分・登録番号などインボイス項目があるか確認
- 不要な列を削除し、自社の取引に合わせて調整
- 名前を付けて保存し、以降はコピーして使い回す
選び方の注意:インボイス制度に対応していない古いテンプレートも残っています。登録番号・税率区分の欄があるかを必ず確認しましょう。
請求書作成サービス・自動化ツールという選択肢
発行枚数が増えてエクセル管理が限界になってきたら、専用サービスや自動化ツールの活用も検討に値します。あくまで中立的な比較として、選択肢を整理します。
エクセルと請求書作成サービスの比較
| 項目 | エクセル | 請求書作成サービス |
|---|---|---|
| 初期コスト | 無料 | 無料〜月額制 |
| 自動計算 | 関数を自分で設定 | 標準搭載 |
| 採番・管理 | 手動 | 自動・一覧管理 |
| 電帳法対応 | 自前で運用設計 | 機能として対応 |
| 大量発行 | マクロが必要 | 標準で一括発行 |
エクセルは無料で柔軟ですが、管理・法対応・大量発行の手間が増えると専用サービスの方が総合的に効率的になるケースもあります。自社の発行枚数と運用体制で判断しましょう。
請求業務の電子化・効率化という観点
発行枚数が一定数を超えると、請求業務の電子化・効率化を検討する価値が出てきます。請求書発行システムや請求書作成サービスを使うと、テンプレートの手動メンテナンスから解放されるためです。エクセルで請求書を作成する場合、消費税率の改定や法令改正があるたびにレイアウトや計算式を自分で修正しなければなりませんが、クラウド型のサービスならインボイス制度や電子帳簿保存法への対応がアップデートで反映されます。
- 請求業務の電子化:紙の印刷・郵送をやめ、PDFやWeb配信で送付・受領する
- 業務の属人化を解消:関数やマクロを作った担当者しか触れない状態を避け、誰でも同じ手順で発行できる
- 集計・入金消込の自動化:売上集計や入金管理を手作業から自動処理に置き換える
請求業務の電子化は、インボイス制度開始後の業務負担を軽減する有効な手段です。まずはエクセルで運用しつつ、件数が増えたタイミングで電子化・効率化に踏み出すのが現実的な進め方です。
請求後の「経理処理」を自動化するという視点
請求書の作成だけでなく、その後の仕訳・記帳まで含めて負担を減らしたい場合、AI-OCRで仕訳を自動化するサービスもあります。当社が提供する AI仕訳(運営:株式会社Saucer)は、領収書・レシー��・クレジットカード明細・銀行通帳などをスキャンし、AIが仕訳データを自動生成するサービスです。
- 生成した仕訳データはマネーフォワード クラウド会計/freee会計/弥生会計にCSVで取り込み可能
- ScanSnapシリーズのスキャナに対応
- 公式LINEでのサポートあり
請求書作成と経理処理の両方の入力負担を減らしたい方は、AI仕訳の詳細・無料トライアルをご検討ください(最新の料金・プランは公式サイトでご確認ください)。
まとめ:エクセルで請求書の作り方を選ぼう
エクセルで請求書を作る流れは、①記載項目とインボイス対応を整理 → ②レイアウト作成 → ③関数で自動計算 → ④PDF変換・保存の4ステップです。
- すぐ発行したい初心者:無料テンプレートを使う
- 自由にカスタムしたい人:ゼロから作り、SUM・VLOOKUPで自動化
- 大量発行する人:マクロや差し込み印刷を活用
- 管理・法対応まで任せたい人:請求書作成サービスを検討
まずは無料テンプレートで1枚作ってみて、運用が増えたら自動化や専用ツールへ段階的に移行するのが、無理のない進め方です。請求から記帳までを見据えるなら、関連科目の整理や請求書カテゴリの記事もあわせて活用してください。
よくある質問(FAQ)
Q. エクセルで請求書を自動作成するには? A. 商品マスタ(単価表)を別シートに用意し、VLOOKUPで品番から品名・単価を自動表示、SUMと税率計算で金額を自動化します。多数の取引先へ一括発行する場合はマクロ(VBA)や差し込み印刷を使うと効率的です。
Q. エクセルで請求書の無料テンプレートはありますか? A. あります。Microsoft公式や会計・請求サービス各社が無料配布しています。インボイス対応(登録番号・税率区分欄あり)のフォーマットを選べば、初心者でもすぐ使えます。
Q. エクセルで請求書は書けますか? A. 書けます。記載項目を決め、レイアウトを整え、関数で合計を自動計算すれば実務に使えます。ただし枚数が増えると管理・電帳法対応の手間が課題になります。
Q. エクセルのデータ一覧から請求書を作成するにはどうしたらいいですか? A. 取引データの一覧表を用意し、VLOOKUPやINDEX/MATCHで該当取引を抽出します。大量発行ならマクロやPower Query、差し込み印刷の併用が有効です。
Q. インボイス制度に対応した請求書をエクセルで作るには? A. 登録番号、税率ごとの対価の額と適用税率、税率ごとの消費税額を記載します。10%・8%の行を分けて集計し、登録番号欄をテンプレートに追加すれば対応できます。
Q. エクセルで作った請求書はそのままメールで送ってよいですか? A. 原則PDFに変換してから送ります。Excelのままだと金額を編集されたりレイアウトが崩れたりするためです。「エクスポート」または「名前を付けて保存」でPDF形式を選べば変換できます。