減価償却費の仕訳完全ガイド|勘定科目・仕訳例まで実務目線で網羅

固定資産を購入したとき、その費用は購入した年に一度に経費化するのではなく、数年に分けて少しずつ費用にしていきます。この処理が減価償却であり、毎期の費用化を帳簿に落とし込む作業が「減価償却費 の 仕訳」です。

本記事では、勘定科目の選び方、直接法と間接法の違い、定額法・定率法の計算、個人事業主や簿記3級レベルの記帳例、決算・期中取得の処理まで、実務で迷いやすいポイントを表と具体例で整理します。

この記事の結論(先に要点)

  • 借方は必ず「減価償却費(費用)」、貸方は直接法=固定資産/間接法=減価償却累計額
  • 計上タイミングは原則決算時、期中取得は月割り
  • 計算方法は主に定額法・定率法の2つ

減価償却費の仕訳の基本|勘定科目と借方・貸方の考え方

この処理でまず押さえるべきは、「どの勘定科目を」「借方・貸方のどちらに」置くかという基本構造です。ここを理解すれば、あとは計算方法と表示方法の組み合わせにすぎません。

減価償却とは何かを30秒で整理

減価償却とは、固定資産の取得費用を耐用年数に応じて分割し、複数年に分けて費用計上する会計処理です。

例えば300万円で購入した機械の耐用年数が10年なら、購入年に全額を費用にせず、毎年30万円ずつ費用化していきます。これにより、資産が収益を生み続ける期間に費用を対応させ、各年度の損益を正しく表せます。

使う勘定科目は主に2つ

減価償却の処理で登場する中心的な勘定科目は次の2つです。

勘定科目区分役割
減価償却費費用その期に価値が減った分を費用計上する
減価償却累計額資産(評価勘定)間接法でこれまでの償却累計を記録する

減価償却費は損益計算書(PL)に、減価償却累計額は貸借対照表(BS)に登場します。減価償却累計額は資産のマイナスを表す「評価勘定」で、固定資産から差し引いて読みます。

借方・貸方はこう決まる

費用が発生したら借方(左)に置く、という簿記の原則どおりです。

減価償却費は必ず「借方」。相手勘定(固定資産 or 減価償却累計額)が「貸方」になります。

  • 借方:減価償却費 ×××
  • 貸方:固定資産 または 減価償却累計額 ×××

この型さえ覚えれば、どの資産でも記帳の骨格は変わりません。あとは金額(=計算方法)と貸方の科目(=表示方法)を当てはめるだけです。


減価償却費の計算方法|定額法・定率法ほか

帳簿に入れる「金額」を出すのが計算ステップです。計算方法は資産の種類や届出によって決まり、主に定額法と定率法の2つを押さえれば実務の大半をカバーできます。

定額法と定率法の違い

項目定額法定率法
計算式取得価額 × 定額法償却率未償却残高 × 定率法償却率
毎年の費用毎年同額初年度が最大、年々減少
向いている資産建物・建物附属設備・無形固定資産機械装置・工具器具備品など(届出時)
特徴計画的で分かりやすい早期に多く償却=早期の節税効果

建物や建物附属設備、ソフトウェアなどの無形固定資産は定額法が強制されます。機械装置や器具備品は、法人で届出がなければ定率法が法定の方法になります。

定額法の計算例

取得価額120万円、耐用年数6年(償却率0.167)の器具備品を例にします。

  • 年間減価償却費 = 1,200,000円 × 0.167 = 200,400円

毎年ほぼ同額を計上し、最終年だけ備忘価額1円を残して調整します。

定率法・その他の方法

定率法は未償却残高(取得価額-これまでの累計)に償却率を掛けるため、初年度がもっとも大きく、年々減っていきます。一定額を下回ると「均等償却」に切り替える調整(保証率・改定償却率)が入ります。

そのほか、鉱業用資産などに使う生産高比例法、リース資産に使うリース期間定額法もあります。一般的な資産は定額法か定率法のどちらかと覚えておけば十分です。


減価償却の対象となる資産と取得原価・耐用年数の考え方

金額を正しく出すには、そもそも「何が償却の対象になるのか」「いくらを元手(取得原価)にするのか」「何年で割るのか(耐用年数)」を押さえる必要があります。ここを外すと、いくら型を覚えても金額がずれてしまいます。

減価償却の対象となる資産・ならない資産

減価償却の対象となる資産は、次の3つの要件をすべて満たすものです。これを満たす資産を「減価償却資産」と呼びます。

  • 事業のために使用していること(販売目的の棚卸資産やプライベート用は対象外)
  • 時間の経過や使用によって価値が減少すること
  • 使用可能期間が1年以上で、取得価額が原則10万円以上であること

逆に、土地や借地権、書画・骨董品のように時間が経っても価値が減らないものは対象になりません。対象資産は形のある「有形固定資産」と、形のない「無形固定資産」、そして「生物」の3区分に大別されます。

区分主な具体例
有形固定資産建物・建物附属設備、機械装置、車両運搬具(自動車・トラック等)、工具器具備品(パソコン・コピー機等)
無形固定資産ソフトウェア、特許権、商標権、のれん(営業権)など
生物事業に使う牛・馬、果樹など

なかでも車両運搬具や機械装置は実務で登場頻度が高く、車両運搬具は普通自動車6年・軽自動車4年など、種類ごとに年数が決められています。

取得原価(取得価額)に含めるもの

償却計算の元手となる金額は、購入代金本体だけではありません。運送費・据付費・関税・購入手数料といった付随費用や、その資産を事業で使える状態にするための費用も取得原価(取得価額)に含めて計算するのが原則です。本体価格だけで計算すると償却額が過少になり、後年の修正につながるため注意します。

法定耐用年数と事業供用日

何年で割るかは、税法で資産ごとに定められた法定耐用年数に従います。たとえばパソコンは4年、普通自動車は6年、金属製の事務机は15年など、資産の種類・構造・用途で細かく決められています。正確な年数は国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」で確認します。

償却を始める起点は購入日ではなく、その資産を本来の目的で使い始めた日=事業供用日です。決算月の直前に取得した資産は、取得日ではなく事業供用日を基準に月割り計算する点に気をつけます。


減価償却を行うメリットと中古資産・特例の扱い

仕組みを理解するうえで、「なぜ分割して費用化するのか」というメリットと、中古資産・特例といった実務で迷いやすい論点も押さえておきましょう。

減価償却のメリット

減価償却のメリットは、資産が収益を生む期間に費用を配分することで、各年度の損益を実態どおりに表せる点にあります。購入年に全額を費用化してしまうと、その年だけ利益が大きく落ち込み、翌年以降は費用負担がないため利益が過大に見えてしまいます。分割計上することで、こうした損益のゆがみを防げます。

加えて、減価償却は現金支出を伴わない費用でありながら課税所得を圧縮できるため、手元資金を厚く保ちやすいというキャッシュ・フロー面の効果もあります。借入金の返済原資を内部に残しやすくなる点も、設備投資の多い事業では見逃せないメリットです。

一方でデメリットもあります。資産ごとに耐用年数を調べ、毎年の償却額を計算し、固定資産台帳を更新し続ける事務負担が生じる点です。さらに、赤字の年でも費用が発生して利益を押し下げるため、金融機関への決算説明では「現金支出を伴わない費用である」ことを補足できるようにしておくと安心です。こうした手間こそ、後述するツールでの効率化が効いてくる部分でもあります。

中古資産を取得した場合の耐用年数

中古資産を取得したときは、新品の法定耐用年数ではなく、使用可能期間を見積もった「簡便法」による短い年数を使えます。法定耐用年数を全部経過した中古資産なら「法定耐用年数×0.2」、一部経過なら「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2」で求めます(いずれも1年未満切捨て・最短2年)。中古は耐用年数が短くなるぶん、早期に多く費用化できるのが特徴です。


減価償却費の仕訳方法①|直接法の仕訳と特徴

計算した金額を帳簿に落とす方法は「直接法」と「間接法」の2つです。どちらを選んでも納税額(損金算入額)に違いはありません。まずは直接法から見ていきます。

直接法とは

直接法は、減価償却費を固定資産の帳簿価額から直接差し引く方法です。貸方に固定資産そのものの勘定科目を置くため、BS上の固定資産は償却後の金額(簿価)で表示されます。

直接法���「いまの資産の価値(簿価)」がBSにそのまま出るのが特徴。シンプルで個人事業主に多い方法です。

直接法の仕訳例

機械装置の当期減価償却費が100,000円のケース。

借方金額貸方金額
減価償却費100,000機械装置100,000

この処理を毎期計上すると、機械装置の帳簿価額が毎年100,000円ずつ減っていきます。

直接法のメリット・デメリット

  • メリット:BSの固定資産が現在価値(簿価)でそのまま読める/記帳がシンプル
  • デメリット:取得価額がBS上で分からなくなる(いくらで買ったか追えない)/これまでの償却累計が見えにくい

取得価額と償却の履歴を残したい場合は、次の間接法が向いています。


減価償却費の仕訳方法②|間接法の仕訳と特徴

間接法は、固定資産を直接減らさず「減価償却累計額」という勘定で償却分を積み上げる方法です。法人の決算では一般的に採用されます。

間接法とは

間接法は、貸方に減価償却累計額を使い、固定資産の取得価額をそのまま残す方法です。BS上は「取得価額 △減価償却累計額 = 簿価」という形で表示されます。

間接法の仕訳例

同じく当期減価償却費100,000円のケース。

借方金額貸方金額
減価償却費100,000減価償却累計額100,000

固定資産(機械装置)の金額は取得価額のまま動かさず、減価償却累計額だけが毎期積み上がっていきます。

直接法と間接法の比較

比較項目直接法間接法
貸方の科目固定資産そのもの減価償却累計額
BS上の固定資産簿価で表示取得価額で表示
取得価額の把握分からなくなる残るので追える
償却累計の把握見えにくいひと目で分かる
主な採用個人事業主に多い法人に多い

どちらも費用計上額は同じ。**「取得価額と償却履歴を帳簿に残したいか」**で選ぶのが実務的な判断基準です。


ケース別・減価償却費の仕訳例|期中取得・売却・一括償却

基本の型が分かったら、実務で頻出するケースを具体例で確認します。簿記3級レベルから個人事業主の申告まで、押さえておきたいパターンをまとめます。

期中(年度途中)に取得した場合

期の途中で取得した資産は、事業供用した月から決算月までを月割りで計算します。

例:耐用年数5年・定額法で年間償却費が120,000円の備品を、決算3か月前に取得した場合。

  • 当期償却費 = 120,000円 × 3か月 ÷ 12か月 = 30,000円
借方金額貸方金額
減価償却費30,000減価償却累計額30,000

固定資産を売却・除却した場合(間接法)

帳簿価額が残る資産を売却したときは、累計額を取り崩して売却損益を計上します。

例:取得価額500,000円・減価償却累計額300,000円(簿価200,000円)の備品を150,000円で売却。

借方金額貸方金額
現金預金150,000備品500,000
減価償却累計額300,000
固定資産売却損50,000

簿価200,000円を150,000円で売ったため、差額50,000円が固定資産売却損になります。

一括償却資産・少額減価償却資産

取得価額の区分で処理が変わります。判定の目安は次のとおりです。

取得価額処理の選択肢
10万円未満全額を消耗品費などで一括費用化
10万円以上20万円未満一括償却資産として3年均等償却が可能
30万円未満(青色申告の中小企業者等)少額減価償却資産の特例で全額即時償却が可能(年間合計300万円まで)

少額減価償却資産の特例は青色申告をする中小企業者等・個人事業主が対象で、適用期限や上限額が改正されることがあります。最新の取扱いは国税庁の公表情報で確認してください。


個人事業主・簿記3級での減価償却費の仕訳

「減価償却費 仕訳 個人事業主」「減価償却費 簿記」といった検索が多いように、立場によって実務の進め方が少し異なります。ここで違いを整理します。

個人事業主の場合

個人事業主は所得税法上、原則として強制償却(毎年必ず償却する)です。実務では直接法での記帳が多く、確定申告では青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄と帳簿を整合させます。

  • 記帳:借方 減価償却費/貸方 〇〇(固定資産)(直接法)
  • 自宅兼事務所の資産などは家事按分し、事業使用割合分だけを費用計上する
  • 取得価額・耐用年数・本年分の償却費は決算書の計算欄で確定させる

法人の場合と「任意償却」

法人は税務上、償却限度額の範囲内で損金算入額を任意に選べる「任意償却」が認められています。計上しなかった分は償却不足額として帳簿価額に残り、後の年度に繰り越されます。資産を保有し続ける限り、最終的に全額を償却する点は変わりません。

簿記3級での出題ポイント

簿記3級では、決算整理仕訳としての減価償却(多くは間接法・定額法)が頻出です。

  • 「決算につき、備品について定額法により減価償却を行う」→ 減価償却費 / 減価償却累計額
  • 期中取得は月割り計算を問われやすい
  • 残存価額ゼロ・耐用年数で割る基本パターンを確実に

試験では間接法が標準。実務に出てから直接法・個人事業主の処理を上乗せして理解すると混乱しません。


減価償却費の表示・帳簿の書き方と注意点

記帳ができたら、決算書のどこに表示されるか、帳簿にどう残すかまで押さえておくと実務で迷いません。

損益計算書・貸借対照表での表示

減価償却費は損益計算書(PL)上、原則として**「販売費及び一般管理費」**に表示されます。製造現場の機械など製造に直接かかわる資産の償却費は、製造原価(経費)に含めて処理します。

決算書表示のされ方
損益計算書(PL)「減価償却費」として販管費(または製造原価)に計上
貸借対照表(BS)直接法=簿価で表示/間接法=取得価額△累計額で表示

PLには個別資産ごとではなく、その期に発生した減価償却費を合算して表示するのが一般的です。

帳簿の書き方と計上タイミング

  • 計上は原則決算時に1回(決算整理仕訳)。月次決算なら年間額を12等分して毎月計上
  • 固定資産台帳に取得価額・耐用年数・償却方法・期首簿価・当期償却費・期末簿価を記録する
  • 期中取得は事業供用月から月割りで計算する

帳簿づくりをExcelで行う場合は、エクセルで複式簿記をつける方法エクセル帳簿の作り方もあわせて参考にしてください。

よくある計上ミスと注意点

  1. 耐用年数の誤り([主な減価償却資産の耐用年数表(国税庁)]を必ず確認)
  2. 期中取得の月割り忘れ
  3. 償却方法の取り違え(建物は定額法強制 など)
  4. 備忘価額1円の残し忘れ(償却完了時)

償却方法は法��で定められた方法に従い、適切な耐用年数で正確に計算することが大切です。勘定科目の選び方に迷ったら減価償却費の勘定科目の考え方もご覧ください。


減価償却費の仕訳を効率化する|AI-OCRで入力負担を減らす

ここまで見たように、減価償却費の仕訳そのものは型が決まっています。一方で実務の負担は、固定資産の取得時に発生する大量の領収書・請求書の入力や、日々の経費処理の積み重ねにあります。

入力作業がボトルネックになりやすい

減価償却の元になる固定資産の購入記録や、付随する経費の処理は、紙やPDFの証憑から手入力する手間が大きくなりがちです。月次・決算の繁忙期にこの作業が集中すると、確認の時間が圧迫されます。

「AI仕訳」でデータ化を自動化

AI仕訳(運営:株式会社Saucer)は、領収書・レシート・クレジットカード明細・銀行通帳などをスキャン(AI-OCR)し、AIが仕訳データを自動生成するサービスです。

  • 生成したデータはマネーフォワード クラウド会計/freee会計/弥生会計にCSVで取込可能(その他CSVインポート対応ソフトも順次対応)
  • 1枚あたり数秒〜数十秒でデータ化、ScanSnapシリーズに対応
  • **業界最安値(10円/枚)**でのデータ化を訴求し、経理・記帳の入力負担をAIが肩代わり

固定資産まわりの証憑も含め、入力の前工程を自動化できれば、減価償却の確認や判断に時間を充てやすくなります。

経理の入力負担を減らしたい方は、AI仕訳の無料トライアルで実際の精度を試せます。料金・キャンペーンの最新情報は公式サイトをご確認ください。

会計まわりの勘定科目の判断は、システム利用料の勘定科目など仕訳・勘定科目カテゴリの記事もあわせて参考になります。


まとめ|減価償却費 仕訳の要点

減価償却費の仕訳は、基本の型さえ押さえれば資産が変わっても応用が利きます。最後に要点を整理します。

  • 借方は必ず減価償却費(費用)、貸方は直接法=固定資産/間接法=減価償却累計額
  • 計算は定額法・定率法が基本。建物・無形固定資産は定額法強制
  • 計上は原則決算時、期中取得は月割り、簿記3級は間接法が標準
  • 個人事業主は強制償却・直接法が多い、法人は任意償却が可能
  • 表示はPLの販売費及び一般管理費が原則

記帳のルールを正しく理解しつつ、入力など反復作業はツールで効率化することで、決算業務全体をスムーズに進められます。関連する減価償却の仕訳の基礎仕訳と減価償却費の関係もあわせてご確認ください。


よくある質問(FAQ)

Q. 減価償却費の仕訳の仕方は? A. 決算時に「減価償却費(費用)」を借方に計上し、貸方を固定資産(直接法)または減価償却累計額(間接法)とします。定額法で年30万円なら『借方 減価償却費 300,000/貸方 減価償却累計額 300,000』と仕訳します。

Q. 減価償却費の勘定科目は? A. 費用そのものは「減価償却費」(費用)です。間接法で使う「減価償却累計額」は資産(評価勘定)に区分されます。PLでは原則「販売費及び一般管理費」に表示します。

Q. 減価償却費は借方・貸方どっち? A. 減価償却費は費用なので、計上時は必ず借方(左側)です。相手勘定の固定資産または減価償却累計額が貸方(右側)になります。

Q. 減価償却費はどの費用ですか? A. 一般的には「販売費及び一般管理費」に区分されます。製造現場の機械の償却費は製造原価(経費)に含めるなど、資産の用途で区分が変わります。

Q. 個人事業主の減価償却の仕訳はどうする? A. 原則として直接法で記帳することが多く、青色申告決算書の計算欄と整合させます。家事按分がある場合は事業使用割合分のみを費用計上します。

Q. 減価償却費の仕訳はいつ行いますか? A. 原則として決算(事業年度末)に1回、決算整理仕訳として計上します。月次決算では年間額を12等分して毎月計上することもあります。期中取得は事業供用月から月割りで計算します。