減価償却の仕訳を完全解説|直接法・間接法の仕訳例と勘定科目一覧

固定資産を購入したとき、その金額は買った年に全額を経費にできません。耐用年数にわたって少しずつ費用に振り替える「減価償却」が必要だからです。本記事では、実際の帳簿づけで迷いやすい借方・貸方の書き方、直接法・間接法の違い、定額法・定率法の計算、一括償却資産・少額減価償却資産といった特例の処理まで、具体的な仕訳例とともに整理します。

この記事の結論(先に要点)

  • 減価償却費費用なので借方(左)、相手科目は直接法なら固定資産、間接法なら減価償却累計額
  • 仕訳のタイミングは原則決算時。月次決算なら年額を12分割して毎月計上。
  • 中身(数字)は同じでも、表示が変わるのが直接法と間接法。税額に差はない

まずは全体像を1枚の表で押さえましょう。

論点直接法間接法
貸方の科目固定資産(建物・車両運搬具など)減価償却累計額
貸借対照表の表示償却後の残額(簿価)だけ取得原価と累計額の両方
取得原価の把握帳簿からは分かりにくい一目で分かる
主に使う場面無形固定資産、個人事業主有形固定資産、法人
納税額への影響同じ同じ

減価償却の仕訳とは|基本のしくみ

減価償却が必要な理由

減価償却とは、固定資産の取得費用を耐用年数に応じて分割し、複数年に分けて費用計上する会計処理です。たとえば事業用に200万円の自動車を買った場合、購入年に全額を費用にすると、その年だけ利益が大きく沈み、翌年以降は費用がゼロで利益が過大に見えてしまいます。

資産は購入年だけでなく、その後数年にわたって売上に貢献します。収益を生む期間に合わせて費用も配分するのが減価償却の考え方です。

減価償却を行うことで、次の2点が実現します。

  • 固定資産の価値減少を財務諸表に正しく反映できる
  • 各期の損益が実態に近づき、経営状態を正確に把握できる

仕訳で登場する2つの科目

減価償却を記帳するときは、性格の異なる2つの勘定科目が登場します。混同しやすいので最初に区別しておきます。

勘定科目区分表示される財務諸表表す金額
減価償却費費用損益計算書(販管費)当期分の償却額
減価償却累計額資産のマイナス貸借対照表取得から当期末までの累計

費用である「減価償却費」は当期だけの金額を表し、翌期に繰り越せません。一方、資産科目である「減価償却累計額」は当期末までの合計額を表し、翌期に繰り越されていきます。この性質の違いが、後述する直接法・間接法の使い分けにもつながります。

なお、耐用年数を経過した後に資産に残る価値を残存価額といいます。現行制度では取得価額の全額を償却でき、最終的に備忘価額1円だけを帳簿に残します(昔は取得価額の10%を残存価額とする扱いでしたが、平成19年度改正で見直されました)。残存価額の考え方は償却の最終年度の金額を左右するため、計算前に押さえておきましょう。

仕訳を行うタイミング

減価償却の仕訳は、原則として決算時(事業年度末)に決算整理仕訳としてまとめて計上します。所有する減価償却資産について、耐用年数と償却方法を確認し、その期の償却額を算出して記帳する流れです。月次決算を行う企業では、年間の見込み額を12で割り、毎月計上するケースもあります。

減価償却費の仕訳方法の全体像

減価償却費の仕訳方法は、突き詰めると「いくらを(金額の計算)/どの科目で(直接法か間接法か)/いつ(決算時)」記帳するかの3点に整理できます。借方は常に「減価償却費」で固定され、変わるのは貸方の科目だけです。本記事ではこのあと、計算方法(定額法・定率法)→直接法の仕訳→間接法の仕訳→特例の処理、の順に、減価償却費の仕訳方法を具体的な仕訳例つきで一つずつ確認していきます。


減価償却の対象となる資産と対象外の資産

減価償却資産の3要件

すべての固定資産が減価償却の対象になるわけではありません。次の3つの要件をすべて満たすものが「減価償却資産」です。

  1. 固定資産のうち、時の経過とともに価値が減少するもの
  2. 取得価額が10万円以上で、使用可能期間が1年以上のもの
  3. 事業のために使用するもの

取得価額が10万円未満の資産は、原則として「消耗品費」などで一括計上でき、減価償却は不要です。

有形・無形・生物の3分類

減価償却資産は、形のある資産だけではありません。大きく3つに分かれます。

分類主な例
有形固定資産建物、建物附属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品
無形固定資産ソフトウェア、特許権、商標権、営業権
生物牛・馬などの家畜、果樹などの樹木

備品(器具備品)やパソコン、コピー機などは「工具器具備品」、社用車は「車両運搬具」として処理するのが一般的です。

償���しない資産に注意

価値が目減りしない資産は、減価償却の対象外です。代表例が土地借地権で、時の経過で価値が減るとは考えないため償却しません。建設中の建物(建設仮勘定)も、完成して使用を開始するまでは償却を始めません。対象資産かどうかの判断を誤ると仕訳全体が崩れるため、最初の区分が重要です。


減価償却費の計算方法|定額法と定率法

仕訳の金額を出すには、まず減価償却費を計算する必要があります。一般的な資産で使われるのは定額法定率法の2つです。

定額法|毎年同じ額を計上

定額法は、取得価額に定額法の償却率を掛けて、毎年同額を計上する方法です。計算がシンプルで、個人事業主は原則この方法を使います。

計算式:取得価額 × 定額法の償却率 = 1年分の減価償却費

たとえば取得価額120万円・耐用年数6年(定額法償却率0.167)の機械なら、1年あたりの減価償却費は「1,200,000 × 0.167 = 200,400円」です。期の途中で取得した場合は、使用した月数で月割り計算します。

定率法|初年度ほど多く計上

定率法は、期首の帳簿価額(未償却残高)に定率法の償却率を掛ける方法です。初年度の償却額が最も大きく、年々減っていく特徴があります。早期に多く費用化したい場合に向きます。

計算式:期首帳簿価額 × 定率法の償却率 = その年の減価償却費

法人の場合、届け出をしなければ機械装置や器具備品は定率法が適用されます。一方、建物・建物附属設備・構築物は原則として定額法しか選べません。なお、生産高比例法(鉱業用資産など)やリース期間定額法(リース資産)といった方法もあります。

定額法と定率法の比較

比較項目定額法定率法
計算の基礎取得価額期首帳簿価額
各年の償却額毎年同額初年度が最大、年々減少
計算の手間少ないやや多い
主な対象建物・無形資産・個人事業主機械・器具備品(法人の原則)

どちらを選んでも、耐用年数を通じた償却額の総額は同じです。


直接法による減価償却の仕訳|やり方と仕訳例

ここからは具体的な仕訳に入ります。まずは個人事業主や無形固定資産で使われる直接法です。

直接法の考え方

直接法は、減価償却費を固定資産の帳簿価額から「直接」差し引く方法です。決算時に、借方へ減価償却費、貸方へ固定資産そのものの科目を記入します。貸借対照表には、償却後の残額(簿価)だけが表示されます。

ポイント:直接法では帳簿に取得原価が残らないため、その資産をいくらで買ったかは別途固定資産台帳などで管理する必要があります。

直接法の仕訳例(車両運搬具)

業務用に取得した車両運搬具について、当期の減価償却費が400,000円だったとします。決算時の仕訳は次のとおりです。

借方金額貸方金額
減価償却費400,000車両運搬具400,000

この処理により、車両運搬具の帳簿価額が400,000円減り、貸借対照表には償却後の残額が載ります。

無形固定資産は直接法が原則

ソフトウェアや特許権などの無形固定資産は、原則として直接法で処理します。たとえばソフトウェア(取得価額60万円・5年定額)の1年分12万円を計上する仕訳は次のとおりです。

借方金額貸方金額
減価償却費120,000ソフトウェア120,000

無形固定資産には累計額という考え方を使わず、帳簿価額を直接減らしていくのが一般的です。


間接法による減価償却の仕訳|やり方と仕訳例

法人の有形固定資産でよく使われるのが間接法です。直接法と中身は同じでも、表示の仕方が異なります。

間接法の考え方

間接法は、固定資産の科目には手を付けず、「減価償却累計額」という別の科目にマイナス分を積み上げていく方法です。決算時に、借方へ減価償却費、貸方へ減価償却累計額を記入します。

取得原価はそのまま帳簿に残り、減価償却累計額が別建てで増えていくため、「いくらで買って、いくら償却済みか」が貸借対照表で一目で分かるのが利点です。

間接法の仕訳例(建物)

建物について、当期の減価償却費が500,000円だったとします。決算時の仕訳は次のとおりです。

借方金額貸方金額
減価償却費500,000減価償却累計額500,000

建物(取得原価)はそのまま残り、減価償却累計額が500,000円増えます。貸借対照表では「建物」と「減価償却累計額(△)」の両方が並んで表示されます。

直接法・間接法で迷ったら

借方の「減価償却費」はどちらも共通で、違うのは貸方だけです。判断に迷うときの目安を整理します。

  • 有形固定資産で取得原価を残したい・法人 → 間接法
  • 無形固定資産・個人事業主・シンプルに管理したい → 直接法
  • どちらを選んでも納税額は同じ(継続適用が原則)

資産を処分・売却したときの仕訳例

減価償却の途中で資産を手放すこともあります。資産を処分したときの仕訳例資産を売却したときの仕訳例は、未償却の帳簿価額(簿価)をどう処理するかがポイントです。

資産を処分(除却)したときの仕訳例

使わなくなった固定資産を廃棄することを除却といいます。帳簿価額の残りを「固定資産除却損」として一気に費用化します。たとえば取得原価80万円・減価償却累計額75万円(簿価5万円)の機械装置を、処分費用5万円をかけて廃棄した場合の仕訳は次のとおりです。

借方金額貸方金額
減価償却累計額750,000機械装置800,000
固定資産除却損100,000現金50,000

簿価5万円に処分費用5万円を加えた10万円が除却損になります(間接法の例)。直接法なら累計額の行は不要で、簿価分だけを除却損に振り替えます。

資産を売却したときの仕訳例

固定資産を売ったときは、売却額と簿価の差額を「固定資産売却益」または「固定資産売却損」で処理します。簿価より高く売れれば売却益、安ければ売却損です。期中に売却する場合は、期首から売却日までの当期分の減価償却費もあわせて計上するのが原則です。

一括償却資産・少額減価償却資産の減価償却の仕訳

10万円を超える資産でも、金額帯によっては通常の減価償却とは別の有利な処理が選べます。取得価額ごとの選択肢を押さえておきましょう。

取得価額別の処理一覧

取得価額主な選択肢
10万円未満全額を費用計上(消耗品費など)
10万円以上20万円未満一括償却資産(3年均等償却)/通常の減価償却
10万円以上30万円未満少額減価償却資産の特例(青色申告者)/通常の減価償却
30万円以上通常の減価償却

一括償却資産の仕訳例

一括償却資産とは、取得価額10万円以上20万円未満の資産を、耐用年数に関係なく3年間で均等に償却する処理です。固定資産税(償却資産税)がかからないメリットもあります。

たとえば18万円のコピー機を購入した場合、取得時と決算時の仕訳は次のようになります。

取得時

借方金額貸方金額
一括償却資産180,000現金180,000

決算時(1年目/180,000 ÷ 3)

借方金額貸方金額
減価償却費60,000一括償却資産60,000

これを3年間繰り返して、全額を償却します。

少額減価償却資産の特例の仕訳例

青色申告をする中小企業者や個人事業主は、取得価額30万円未満の資産を、その年に一括で経費計上できる特例があります(一事業年度の合計300万円が上限)。

18万円のパソコン(工具器具備品)を取得し、本特例を適用する場合の仕訳例です。

借方金額貸方金額
工具器具備品180,000現金180,000
減価償却費180,000工具器具備品180,000

このように取得した年に全額を費用化できるため、節税効果が期待できます。なお、適用には青色申告などの要件があり、年度ごとに上限額や制度内容が見直されることがあるため、適用前に最新の要件を確認してください。


知っておきたい減価償却の制度と注意点

仕訳を正しく行うために、関連する制度や実務上の論点も押さえておきましょう。

耐用年数の確認方法

減価償却の年数は自由に決められず、資産の種類・構造・用途ごとに**「法定耐用年数」**として定められています。詳細は国税庁が公開する「主な減価償却資産の耐用年数表」で確認できます。

資産の例法定耐用年数の目安
事務机・椅子・キャビネット(金属製)15年
一般用の普通自動車6年
パソコン(サーバー用以外)4年

※具体的な年数は構造・用途で変わるため、必ず耐用年数表で確認してください。

法人の任意償却と個人の強制償却

法人と個人事業主では、償却の義務が異なります。

  • 法人:税務上は償却限度額の範囲内で損金算入額を任意に選べる(任意償却)。計上しなかった分は未償却残高として残る。
  • 個人事業主:毎年必ず償却費を計上する強制償却。計上を省略できない。

この違いは、決算時の処理判断に直結するため理解しておきましょう。

取得価額には付随費用も含める

減価償却の基礎となる「取得価額」は、資産の本体価格だけではありません。その資産を事業で使える状態にするまでにかかった費用を含めます。

  • 引取運賃・運送料
  • 据付費・設置費用
  • 購入手数料 など

これらを取得価額に含め忘れると、償却額の計算がずれてしまうので注意が必要です。減価償却費の勘定科目の扱いについては「減価償却費勘定科目」、より詳しい仕訳例は「仕訳 減価償却費」や「減価償却費 仕訳」もあわせて参考にしてください。


減価償却の仕訳を効率化する|会計ソフトとAI仕訳の活用

ここまで見たとおり、減価償却の記帳は「対象資産の判定 → 償却方法の選択 → 計算 → 直接法/間接法での記帳」と工程が多く、資産が増えるほど手間がかさみます。固定資産台帳や帳簿づけは、エクセルで管理することもできますが(「エクセル 複式簿記」「エクセル 帳簿」参照)、件数が増えると転記ミスや計上漏れが起きやすくなります。

会計ソフトでの自動計算

多くのクラウド会計ソフトには固定資産台帳の機能があり、取得価額・耐用年数・償却方法を登録しておけば、毎期の減価償却費を自動計算し、決算仕訳まで用意してくれます。手計算や転記を減らせるため、計上漏れの防止に役立ちます。

AI-OCRで入力をまるごと自動化「AI仕訳」

固定資産の購入時の領収書やカード明細の入力そのものを軽くしたい場合は、AI仕訳(運営:株式会社Saucer)のようなAI-OCRサービスも選択肢になります。

  • 領収書・レシート・クレジットカード明細・銀行通帳をスキャンし、AIが仕訳データを自動生成
  • 生成データはマネーフォワード クラウド会計/freee会計/弥生会計などにCSVで取込可能
  • 1枚あたり数秒〜数十秒で処理、公式LINEでのサポートあり

入力作業をAIに肩代わりさせることで、経理担当者は減価償却のような判断が必要な処理に時間を使えるようになります。日々の仕訳負担を減らしたい税理士事務所や経理部門は、無料で試すことができます(料金・キャンペーンの詳細は公式サイトをご確認ください)。

仕訳・勘定科目の関連記事は仕訳・勘定科目カテゴリ、製品の詳細はAI仕訳カテゴリにまとめています。


よくある質問(FAQ)

減価償却の仕訳の仕方は?

決算時に「借方:減価償却費/貸方:固定資産(直接法)または減価償却累計額(間接法)」と記帳します。年間の減価償却費が40万円の車両なら、直接法は『減価償却費 400,000/車両運搬具 400,000』、間接法は『減価償却費 400,000/減価償却累計額 400,000』です。

減価償却費の勘定科目は?

費用を計上する側は「減価償却費」(販売費及び一般管理費)です。間接法で資産のマイナスを記録する側は「減価償却累計額」(貸借対照表の資産科目)を使います。

減価償却費は借方・貸方どっち?

減価償却費は費用なので、必ず**借方(左側)**に記入します。貸方(右側)には、直接法なら固定資産の科目、間接法なら減価償却累計額を記入します。

減価償却費の直接法仕訳は?

減価償却費の直接法仕訳は、固定資産の帳簿価額を直接減らす方法で、『借方:減価償却費/貸方:建物・車両運搬具などの固定資産科目』と記帳します。貸借対照表には償却後の残額(簿価)が表示され、無形固定資産は原則この直接法で処理します。

減価償却の仕訳はいつ行いますか?

原則として決算時(事業年度末)に、その期の減価償却費をまとめて計上します。月次決算を行う場合は、年間見込み額を12分割して毎月計上することもあります。

個人事業主の減価償却の仕訳は?

原則として定額法・直接法で処理し、確定申告(決算)時に計上します。個人事業主は毎年必ず償却する「強制償却」です。30万円未満の資産は、青色申告者なら少額減価償却資産の特例で一括経費化も選べます。

備品(パソコン等)の減価償却の仕訳は?

パソコンやコピー機などの備品は「工具器具備品」として処理します。10万円未満は消耗品費で一括計上、10万円以上は減価償却(または一括償却資産・少額減価償却資産の特例)の対象です。決算時に『減価償却費/工具器具備品(直接法)』または『減価償却費/減価償却累計額(間接法)』で計上します。


まとめ 減価償却の処理は、①対象資産か判定し、②定額法・定率法で金額を計算し、③直接法・間接法のいずれかで決算時に計上する——この流れが基本です。借方は常に「減価償却費」、貸方は資産科目か減価償却累計額。10万〜30万円の資産には一括償却・少額特例という有利な選択肢もあります。件数が多い場合は会計ソフトやAI-OCRを活用し、計算と入力の負担を減らしながら正確な処理を目指しましょう。

※税制・耐用年数・特例の上限額は改正されることがあります。具体的な処理にあたっては、最新の国税庁資料や顧問税理士にご確認ください。