事業で車を使う個人事業主や法人にとって、ガソリン代は毎月発生する身近なコストです。これを正しく経費に計上できれば、所得を圧縮して節税につなげられます。

ただし「どこまで経費にできるのか」「勘定科目は何を使うのか」「私用と兼用の車はどう計算するのか」といった疑問でつまずく人は少なくありません。

本記事では、ガソリン代を経費にできる範囲・家事按分の計算方法・勘定科目の選び方・支払い方法別の仕訳例・注意点までを、実務でそのまま使える形で網羅的に解説します。

ガソリン代は経費にできる?まず押さえる結論

最初に結論から整理します。事業のために使った車のガソリン代は、個人事業主でも法人でも経費に計上できます。事業で使用した分のガソリン代は経費として計上できるというのが大前提で、あとは「専用車か兼用車か」「どの勘定科目を使うか」「どう仕訳するか」を実態に合わせて決めていくことになります。

事業で使った分は経費になる

「事業で使用する」とは、取引先や商談・現場への移動、事業所間の移動など、売上を生むための業務に伴う使用を指します。逆に、家族での買い物・旅行・通院といったプライベートな移動分は経費になりません。

  • ✅ 経費にできる例:取引先訪問、現場への移動、商品の配送、銀行や郵便局への業務移動
  • ❌ 経費にできない例:家族旅行、私的な買い物、休日のレジャー

事業専用車と兼用車で扱いが変わる

ガソリン代の計上方法は、その車を「事業専用」で使っているか「私用と兼用」しているかで分かれます。

車の使い方経費にできる範囲必要な処理
事業専用車ガソリン代の全額領収書の保管のみ
事業・私用の兼用車事業使用分のみ家事按分が必要

事業専用車なら全額を経費にできますが、兼用車では後述する家事按分で事業使用分を切り出す必要があります。事業に使用している車が事業専用車であれば、使用したガソリン代を全額経費として計上できますが、その場合でも運転日誌や走行記録、レシートや領収書を保管し、プライベートでは使っていないことを証明できるようにしておくことが大切です。

法人と個人事業主の違い

法人で社用車を業務にのみ使っている場合は、ガソリン代を全額経費に計上できます。一方、個人事業主は自家用車を兼用しているケースが多く、按分が論点になりやすいのが特徴です。本記事は個人事業主のケースを中心に、法人にも共通する考え方を解説します。

ガソリン代を家事按分する計算方法

私用と兼用している車の燃料代は、事業で使った割合を求めて経費化します。これを家事按分といいます。按分には明確な法定ルールがないため、合理的に説明できる基準で算出することが重要です。

走行距離で按分する

最も客観性が高いのが走行距離による按分です。事業で走った距離が全走行距離に占める割合を按分率とします。

【計算例】1か月の総走行距離が500km、うち事業利用が300km、ガソリン代が10,000円の場合 按分率=300km ÷ 500km = 60% 経費にできる金額=10,000円 × 60% = 6,000円

走行記録(運転日報や走行メモ)を残しておくと、税務調査でも根拠を示しやすくなります。

使用日数で按分する

走行距離の記録が難しい場合は、車を業務で使った日数を基準にする方法もあります。

【計算例】月30日のうち、仕事で車を使う日が平均15日の場合 按分率=15日 ÷ 30日 = 50% ガソリン代の50%を経費に計上

毎月の使用状況にムラがある場合は、1年間の使用量でならして按分率を決めると安定します。

按分率を決めるときのポイント

  • 一度決めた按分率は、合理的な理由がない限り期間を通して継続して使う
  • 走行距離・使用日数のどちらを採用したか、根拠を記録に残す
  • 按分率の計算過程をメモやスプレッドシートで保存しておく

按分の根拠を説明できないと、税務調査で経費性を否認されるリスクがあります。「なんとなく半分」ではなく、数字で裏づけできる基準を選びましょう。

ガソリン代に使える勘定科目とその使い分け

燃料代の勘定科目は1つに固定されているわけではなく、複数の選択肢があります。どれを選んでも納める税額が変わるわけではないため、実態に即して内訳を把握しやすい科目を選ぶのが基本です。

主に使われる4つの勘定科目

勘定科目主な用途こんな事業者に向く
車両費車関連の費用をまとめて管理車の使用頻度が高く、車検・整備費も多い
旅費交通費移動・出張に伴う費用営業移動が中心で交通費とまとめたい
燃料費燃料コストを独立して把握運送業など燃料費の比重が大きい
消耗品費少額・低頻度の支出車をたまにしか使わない
売上原価売上に直結する燃料コスト運送・配送が事業の中心

各科目の特徴

  • 車両費:燃料代に加え、車検費用・修理費・自動車保険料など車に関わる費用を一括管理できる。車関連コストをまとめて見たい人向け。
  • 旅費交通費:電車・バス・タクシー代などと同じ科目で管理でき、移動コスト全体を把握しやすい。
  • 燃料費:ガソリン・軽油などの燃料コストだけを抜���出せる。運送業や配送業で原価管理をしたい場合に有効。
  • 消耗品費:使用頻度が低い場合に手軽。ただし他の消耗品と混ざり、車関連費が見えにくくなる点に注意。
  • 売上原価:運送業や配送業など、燃料代が「移動のための付随費用」ではなく売上を生み出すために不可欠な原価となる事業では、燃料費を売上原価として処理することもあります。燃料が事業の中心コストになっているかどうかが判断の分かれ目です。

どの勘定科目を選べばいいか

判断基準は、車の使用頻度・保有台数・業務目的・会計方針です。車を主力で使うなら車両費でまとめ、移動コストを重視するなら旅費交通費、というように事業の実態に合わせて選びます。重要なのは、選んだ科目を継続して使うことです。

支払い方法によるガソリン代の仕訳例

ガソリン代は支払い方法によって仕訳が変わります。ここでは勘定科目に「車両費」を使った代表的なパターンを示します。実際にはご自身が選んだ科目に置き換えてください。

現金で支払った場合

ガソリンスタンドで5,000円を現金で支払ったケースです。

借方金額貸方金額
車両費5,000現金5,000

クレジットカード・ETCカードで支払った場合

5,000円をクレジットカードで支払い、後日口座から引き落とされるケースは2段階で記帳します。

①給油時(カード利用日)

借方金額貸方金額
車両費5,000未払金5,000

②引き落とし時

借方金額貸方金額
未払金5,000普通預金5,000

家事按分が必要な場合の仕訳

兼用車で按分率60%、ガソリン代10,000円を現金で支払った場合は、事業使用分のみを経費にします。

借方金額貸方金額
車両費6,000現金10,000
事業主貸4,000

私用分の4,000円は経費ではないため、「事業主貸」で処理します。期末にまとめて按分する方法もありますが、その場合は按分前の全額をいったん経費計上し、決算時に私用分を事業主貸へ振り替えます。

ガソリン代を経費にする際の注意点

経費計上の方法を誤ると、税務調査で否認されたり、内訳が把握できなくなったりします。特に次のポイントに注意しましょう。

軽油(ディーゼル車)は税金の扱いが異なる

ガソリンと軽油では含まれる税金が違うため、税務上の処理にも違いがあります。

燃料価格に含まれる主な税消費税の扱い
ガソリンガソリン税・石油税(石油石炭税)税込価格に消費税が課税される
軽油石油税・軽油引取税軽油引取税には消費税がかからない

ガソリン価格には**ガソリン税と石油税(石油石炭税)**が含まれ、これらを含めた本体価格に消費税が課税されます。一方、軽油は石油税には消費税がかかるものの、軽油引取税には消費税がかからない点が大きな違いです。軽油引取税は消費税の課税対象外(不課税)のため、ガソリン代と同じように軽油引取税分まで課税仕入として処理すると、仕入税額控除が過大になり消費税の納税額が本来より少なくなってしまいます。この点は税務調査でも厳しくチェックされます。

そのため、消費税の課税事業者がインボイス・帳簿で正確に処理する場合、軽油代は本体価格・石油税と軽油引取税を分けて記帳する必要があります。ディーゼル車を使う事業者は特に注意してください。なお、給油したものの年度内に使い切らなかった未使用のガソリンは、厳密には「貯蔵品」として資産計上し、使用した分だけ費用に振り替えるのが原則です。

レシート・領収書は必ず保管する

ガソリン代を経費にするには、支払いの事実を証明できる証拠書類が必要です。

  • レシート・領収書は日付・金額・支払先が分かる状態で保管する
  • 電子帳簿保存法に対応するなら、電子データで受領した明細は要件に沿って電子保存する
  • 保存期間は原則として確定申告期限の翌日から5〜7年

勘定科目は継続して使う

会計には「継続性の原則」があります。一度決めた勘定科目は、合理的な理由がない限り同じ取引で使い続けましょう。年度ごとや月ごとに科目を変えると、費用の内訳が把握できなくなり、税務上の説明も困難になります。

ガソリン代以外に経費にできる車関連の費用

事業で車を使うなら、ガソリン代以外にも経費にできる費用が多くあります。漏れなく計上すれば、より正確な所得計算ができます。

取得・維持にかかる費用

費用の種類経費処理の考え方
車両の取得費用高額な場合は減価償却で複数年に分けて計上
リース代原則として全額を経費に計上(兼用なら按分)
車検・点検費用車両費などで計上
自動車保険料保険料・車両費などで計上
自動車税・重量税租税公課などで計上

車両本体を購入した場合は、一度に全額を経費にできず、法定耐用年数に沿って減価償却します。仕訳の考え方は減価償却の仕訳の解説記事減価償却費の勘定科目の記事も参考にしてください。

移動・駐車に関する費用

これらも兼用車であれば、燃料代と同様に家事按分が必要です。車関連費を一貫した按分率で処理すると整合性が取れます。

兼用費用は按分率をそろえる

ガソリン代を走行距離で60%按分しているなら、駐車場代やリース代など他の車関連費も**同じ60%**で按分するのが自然です。費用ごとに按分率がバラバラだと、税務調査で説明がつきにくくなります。

ガソリン代を経費にするときによくある質問

検索でよく見られる疑問に、改めてポイントを絞って回答します。

レシートがない・なくした場合は?

レシートを紛失しても、支払いの事実を別の記録で補強できれば経費計上は可能です。

  • クレジットカード・ETCの利用明細を保管する
  • 通帳の出金記録と給油日を突き合わせる
  • どうしても証憑がない少額の支出は、出金伝票を作成して記帳する

ただし出金伝票は補助的な手段であり、毎回これに頼ると経費性を疑われやすくなります。日常的にレシートを保管する運用を整え、紛失は例外にとどめるのが基本です。給油のたびに撮影してクラウドに保存しておくと、紙の紛失リスクそのものを減らせます。

確定申告で全額落とせる?いくらまで?

「いくらまで」という上限額の規定はありません。経費にできるのは事業で実際に使った分です。事業専用車なら全額、兼用車なら按分後の事業使用分が経費になります。実態と乖離した過大な計上は否認対象になります。

白色申告でもガソリン代は経費にできる?

できます。白色申告でも事業に使ったガソリン代は経費に計上可能です。家事按分のルールも青色申告と同様に適用されます。記帳と証憑保管をきちんと行いましょう。確定申告全体の流れはエクセルで帳簿をつける方法の記事も参考になります。

ガソリン代の記帳・仕訳をラクにする方法

ここまで見てきたとおり、ガソリン代の経費計上は「勘定科目の選択」「家事按分」「支払い方法別の仕訳」「証憑の保管」と、毎月地道な作業が積み重なります。給油のたびにレシートを仕訳に起こすのは、件数が増えるほど負担になります。

手入力の限界とミスのリスク

  • 給油レシートの枚数が多く、月末にまとめて入力すると抜け漏れが起きやすい
  • 勘定科目の選択や按分計算を毎回手作業で行うと処理にばらつきが出る
  • 紙のレシートが散逸し、確定申告直前に探し回ることになりがち

こうした定型作業は、システム���で大幅に軽減できます。クラウド会計ソフトや経費精算システムを使えば、入力の手間や転記ミスを減らせます。

AI-OCRで仕訳を自動化する選択肢

レシートや明細の入力そのものを自動化したい場合、AI-OCRで仕訳データを自動生成するサービスという選択肢があります。

たとえばAI仕訳(運営:株式会社Saucer)は、領収書・レシート・クレジットカード明細・銀行通帳などをスキャンすると、AIが仕訳データを自動生成するサービスです。

  • 領収書・レシート・カード明細・通帳をAI-OCRで読み取り、仕訳データを自動生成
  • 生成したデータはマネーフォワード クラウド会計・freee会計・弥生会計などにCSVで取り込み可能
  • ScanSnapシリーズ(A4対応)でのスキャンに対応
  • 公式LINEでのサポートあり

ガソリン代のように毎月コンスタントに発生する経費の入力負担を、AIが肩代わりするイメージです。料金やキャンペーンの最新情報は公式サイトをご確認ください。

ガソリン代を含む経費の記帳をもっとラクにしたい方は、AI仕訳の無料トライアルをお試しください。

なお、システム利用料そのものの経理処理についてはシステム利用料の勘定科目の記事で解説しています。経費全般の処理は経費・領収書カテゴリもあわせてご覧ください。

まとめ:ガソリン代の経費は「按分」と「継続」がカギ

最後に、ガソリン代を経費にする際のポイントを整理します。

  • 事業で使った分のガソリン代は経費にできる。事業専用車は全額、兼用車は家事按分して事業使用分のみ
  • 按分は走行距離または使用日数で行い、根拠を記録に残す
  • 勘定科目は車両費・旅費交通費・燃料費・消耗品費から実態に合うものを選び、継続して使う
  • 支払い方法(現金・クレジット・ETC)で仕訳が変わる。証憑は5〜7年保管
  • ディーゼル車は軽油引取税の扱いに注意。ガソリン代以外の車関連費も同じ按分率で漏れなく計上

ガソリン代の経理は、毎月の積み重ねを正確に処理できるかどうかが重要です。記帳の手間が課題になっているなら、クラウド会計やAI-OCRによる自動化も検討してみてください。日々の仕訳を効率化すれば、確定申告の負担も大きく軽減できます。